学校のデジタル化の課題への挑戦

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学校のデジタル化の課題への挑戦

ドイツの学校でローデ・シュワルツの子会社LANCOM Systemsのネットワークテクノロジーを採用

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Updated on 5月 13, 2024 🛈
Originally published on 1月 27, 2021

ドイツでは、学校デジタル協定(DigitalPakt Schule)に基づいて、2019年5月以降、教育システムのデジタル化推進のために50億ユーロ(約6,000億円)が投じられています。2020年3月からのパンデミックによる全国的な学校閉鎖をきっかけとして、デジタル化はさらに緊急性を増しています。ただし、危機によるプレッシャーのために、ITセキュリティーにしわ寄せが生じています。この状況で、ドイツのネットワーク専門企業でローデ・シュワルツの子会社であるLANCOM Systemsは、信頼性が高く、GDPRに準拠した、非常に効果的な統合ソリューションを提供しています。その主な要素は、LANCOM Wi-Fi 6アクセスポイントと、学校ネットワーク全体のインテリジェントな管理を可能にするLANCOM Management Cloud(LMC)です。

パンデミックによる学校閉鎖の初日にあたる2020年3月16日に、mebisの仮想クラスルームがアクセスの殺到によりダウンしました。これを引き起こしたのは生徒たちではなく、ハッカーでした。何十万件ものページ呼び出しを送りつけられて、バイエルン教育省のこの学習プラットフォームは停止に追い込まれたのです。これを受けて同省は、ARD-alphaの教育用テレビチャンネルSchule daheim – Online Lernen(ホームスクール:オンライン学習)に、ツイッターでユーザーを誘導しました。それで、生徒たちは家でテレビを見ていたのです。

DigitalPakt Schule:仮想クラスルームのペースメーカー

バイエルン州にとって、このデジタル教育の新しい時代は試練の連続でした。それは、ドイツ全土の学校がデジタル化に際して直面する課題の典型的な例でもあります。そのような課題の1つに、ITセキュリティーがあります。これに関しては、ドイツ連邦教育研究省のDigitalPakt Schuleがペースメーカーとして主要な役割を果たしています。2019年5月以降、ドイツの32,000の初等/中等教育機関が、50億ユーロの基金(および連邦各州からの5億ユーロの追加資金)からの資金援助を申請しています。Redaktionsnetzwerk Deutschlandによれば、2020年夏までに承認されたのは2億4200万ユーロに留まり、2020年末までに承認された分は9億1600万ユーロ(約18 %)でした。

コロナウイルス危機による状況の激変により、迅速かつ手間を要しない対応が必要とされたため、教育省はただちにコロナ支援として1億ユーロの資金を追加し、州が資金提供するオンラインプラットフォームと学習コンテンツの助けを借りて教育を継続できるようにしました。これは、DigitalPakt Schuleの予算の使途がハードウェアに限られていたからです。この予算は2回にわたって補充されました。7月初めに、mebisやbildungsserver.deなどの自宅学習用プラットフォームの利用に必要なデバイスをすべての生徒に届けるために、5億ユーロが承認され、さらにIT管理のために、2020年12月に5億ユーロが追加されました。

特に現在では、教室での授業にも、スマートボード、コンピューター、タブレットによるデジタルサポートが必要とされています。これは、教室に来ていない生徒でも、同時にまたは別の時刻に同じコンテンツにアクセスできるようにするためです。そのためには、生徒と教師、そして管理担当者にも、デバイスと高性能のインターネットインフラによる接続が必要です。

従来の黒板は新しいスマートスクールには時代遅れでしょうか?Bitkom(ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会)の調査によると、ドイツの学校で生徒たちが最も不満に感じているのは、デジタルメディアの教育での使用が少ないことです。LANCOMのWi-Fiソリューションを使えば、迅速かつセキュアにデジタル化を実現できます。

教育のスマート化:後れを取るドイツ

学校の建物が古い場合、隅々まで配線を巡らせることが難しいため、最新のITインフラを迅速に装備できないことがあります。ITネットワーク専門企業LANCOM SystemsのDigitalPakt SchuleタスクフォースのプロジェクトマネージャーであるJan Buisは、「ドイツの学校システムはデジタル化で後れを取っています」と述べています。Wi-Fiの普及率は26.2 %にすぎません。Jan Buisの母国オランダではこの比率は98 %であり、デンマークでは100 %の学校にWi-Fiアクセスが備わっています。ドイツの日刊紙Tagesspiegel(ターゲスシュピーゲル)が紹介しているIEA(International Education Association)の調査によれば、カザフスタン(58.8 %)やチリ(53.1 %)といった国々のほうが、この面に関しては進んでいます。

ただし、ITセキュリティーの問題は、デバイスがサーバーに接続する前から発生します。多くの学校ではクラウドサービスが選択されていますが、これはすぐに利用できて初期投資が少なくて済むという利点があるものの、EU一般データ保護規則(GDPR)の規定を充たさない可能性があります。ローデ・シュワルツの子会社LANCOM Systemsの創業者で社長であるRalf Koenzenは、連邦資金を申請したプロジェクトの多くで、GDPRへのコンプライアンスとITセキュリティーが欠如しているのを見てきました。

学校ネットワークには個人データや成績といった機密性の高い情報が数多く存在することを考えれば、これは問題です。Ralf Koenzenは、「関係者は、コロナウイルス危機がデータ保護の長期的な危機につながらないように注意すべきです」と警鐘を鳴らしています。LANCOM Systemsの企業コミュニケーション担当シニアマネージャーAndré Faßbenderは、「多くの学校や学校への資金提供者は、米国プロバイダーのクラウドベースのソリューションが、欧州データ保護規則に適合していないことに気づいていません」と述べています。今年の夏、欧州司法裁判所は、「Privacy Shield」データ取引を無効とする判決を下しました。この判決により、EUから米国への個人データの転送は多くの場合に違法となります。

DigitalPakt Schuleと学校でのクラウド利用に関するドイツ人の意見

DigitalPakt Schuleサポートプログラムを支持する
66 %
学校のクラウドとしてはドイツまたは欧州のプロバイダーが望ましい
73 %
データ保護のためにクラウドサービスよりも従来型のソリューションのほうが望ましい
60 %
クラウドでの機密データ保護のための拘束力のある規制が必要
76 %

©出典:2019年9月に英国の調査会社YouGovがLANCOM Systemsのために行った標本調査

ドイツ製のデータ保護とITセキュリティー

LANCOM Systemsのソリューションを使えば、学校は安全を確保できます。LANCOMはドイツ企業なので、ドイツの法律のみに従っており、管理ソリューションはドイツ国内でホストされているため、データはGDPRの法的領域と適用範囲から出ることはありません。これに対して、米国企業は、自国政府によるユーザーのデータへのアクセスを認めることを義務付けられています。また、LANCOMは自社製品にバックドアがないことを保証しており、連邦経済省が提唱した「ドイツ製のITセキュリティー」信頼マークを保持しています。

ドイツのアーヘンにある中等学校のViktoriaschuleは、高レベルのデータ保護とバックドアがないことによる利点をすでに実感しています。2019年夏に、同校のネットワークアーキテクチャーは、LANCOMのクラウド管理型Wi-Fiネットワークにアップグレードされました。このプロテスタント系中等学校の生徒は、学校のタブレットプールからデバイスを受け取り、一元的に保存されている文書を使って共同作業を行い、Wi-Fiを通じて学校のメディアサーバーから教材ビデオをストリーミング再生することができます。これに対して従来は、学校の管理、教育、および生徒や来客の個人デバイス用にそれぞれ異なるネットワークが設けられており、すべてのデバイスを手動で構成する必要がありました。現在では、IT管理者は、学校ネットワーク全体の管理を、校内のクラウドベースのITネットワークインフラを通じて簡単に行うことができます。

Viktoriaschuleのネットワークアーキテクチャーは、2019年にLANCOMのクラウド管理型Wi-Fiネットワークにアップグレードされました。

IT管理者に取って代わるクラウド型管理

現在は時間が貴重なので、高性能な学校Wi-Fiと、学校ネットワークの管理とメンテナンスのための実用的なソリューションが強く求められています。ネットワーク管理は通常は専門家の仕事であり、教師や学校予算への影響を最小化しつつ、Wi-Fiネットワークの動作の信頼性を維持することが求められます。

LANCOM Management Cloud(LMC)を使用することで、学校と資金提供者は、学校ネットワークの初期セットアップと継続的運用の両方をほぼ全面的に自動化できます。LANCOMは、ソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)を採用し、クラウドを通じてこのテクノロジーを低コストで利用可能にしています。

LANCOM Management Cloudは、ネットワークインフラ全体の構成、管理、監視をサポートするので、IT管理者を学校に置く必要がなくなります。これにより、LANCOMネットワークポートフォリオ(ルーター、スイッチ、アクセスポイント、ファイアウォール)全体で統一的なわかりやすい管理が可能になります。どのサイトからでも、すべてのサイトに対する管理作業を、必要ならシンプルなタブレットからでも実行できます。これは、IT管理者の不足に悩んでいるすべての学校にとって朗報です。さらに、LMCを使えば、複数の学校を担当している資金提供者にとっての作業も容易になります。システムの導入は、週末や休暇期間を利用して、ほんの数日で行うことができます。

LANCOMが示す手本

包括的なIT構造の利点を実感しているのは、個々の学校だけではありません。今年2月に、ヘルムシュテット市が、ニーダーザクセン州で最初の資材コストの資金提供者として、DigitalPakt Schuleプログラムからの補助金を受領しました。以来、ヘルムシュテット市内の5つの初等学校すべてで、LANCOMのWi-Fiアクセスポイントにより全校にわたる無線アクセスが実現されています。ネットワークの管理は、市のIT部門が行っています。

ドイツのほとんどの学校では、ITシステムの組織化、修理、管理を行ってくれるプロフェッショナルな継続的ケアが歓迎されるはずです。それによって、教師や生徒は教育に集中できるからです。「誰もがデジタル管理者を必要としています」と語るのは、LANCOM SystemsのディレクターパブリックであるDirk Hetterichです。教師は、IT管理のために2時間残業するのではなく、教えることに集中すべきです。「考えてみれば、運転の初心者に、道を舗装してから運転しろとは言いませんよね」とコメントしています。

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