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RFを理解する - 無線周波数テクノロジー

著者:電子計測エキスパート、Paul Denisowski

以下では、RF(無線周波数)テクノロジーの概要について説明します。

RFを理解するには、電気の2つの種類について理解することが役立ちます。1つ目は直流(DC)です。DC電源の例としては、一般的な家庭用電池が挙げられます。DCでは、発生する電圧/電流の大きさが、通常時間的に一定です。2つ目のタイプは交流(AC)

家庭用の電気コンセントから供給される電圧/電流は、時間とともに上昇/下降します。電流が上昇/下降する速度は、周波数と呼ばれます。周波数は、電流が1秒間に何回、上昇と下降の1つのサイクルを完了して、元のレベルに戻るかを表します。1秒間のサイクル数は、ヘルツ(Hz)単位で測定されます。例えば、電流が1秒間に4回のサイクルを完了する場合、周波数は4 Hzです。米国の場合、AC電源コンセントの周波数は一般的に60 Hzです。すなわち、電流は1秒間に60回サイクルを完了します。

ACから発生する電磁界

交流電流がケーブルやアンテナなどの導体を流れると、電磁界が発生し、外部の空間に伝播します。AC電源コンセントの60 Hzのようなきわめて低い周波数の場合、この電磁界は特に強くなく、あまり遠くまでは伝わりません。

RFの3つの一般的用途

RFには3つの一般的用途があります。RFアプリケーションの1つめのカテゴリーは、物体の加熱です。これには、電子レンジの他に、産業用/医療用アプリケーションが含まれます。

RFのもう1つの用途は、物体の検知/検出です。この場合、RF信号を送信し、物体に当たって戻ってきた信号の特性から、物体に関する情報を入手します。

最もよく知られている用途は、情報の伝送です。ラジオ放送やテレビ放送は、音声や映像といった情報を伝送するためのRF使用の初期の例です。Wi-Fi、セルラー音声/データ、Bluetoothといった現代のデータ伝送テクノロジーは、RFの特性を利用しています。また、空間を通じて情報を伝送する能力は、GPSなどの衛星アプリケーションにとってきわめて重要です。

RFによる物体の加熱

電子レンジは、「マグネトロン」と呼ばれるものによって、約2.5 GHzのRFを発生します。これは、Wi-FiやBluetoothによって一般的に用いられている周波数レンジと同じです。RFは食品や液体の内部に浸透し、分子(特に水)を振動させることで熱を起こします。RFを使用して電子レンジで食品を加熱する際には、レンジ内に金属の物体を入れるのを避ける必要があります。マグネトロンから発生したRFは、金属に当たると伝導RFに変換されます。それによって金属内を流れる電流のために、火花や炎が発生するおそれがあるのです。

残り物を温める以外に、RFは産業用途での加熱にも用いられます。例としては、牛乳の殺菌が挙げられます。さらに、医療の分野でも、がん細胞の破壊や各種の美容治療といった用途に用いられます。

RFによる物体の検知

RFによる物体の検知の例としては、レーダーが挙げられます。現在用いられているさまざまなレーダーアプリケーションの例としては、航空機や船舶の検出、車両や野球ボールの速度測定などが挙げられます。RFによる検知のもう1つの例としては、多くの空港で金属探知機に代わって用いられるようになったボディースキャナーが挙げられます。アラームやその他のシステムのモーションセンサーの一部にも、RFが用いられています。RFによる検知のあまり知られていない用途として、材料測定が挙げられます。RFを使用すると、材料のいくつかの特性を非破壊的に測定できます。例えば、乳がんを発見するための組織検査、樹木内部の腐食やシロアリの検出などです。

RFによる情報伝送

現代の世界でのRFの最も一般的な用途は、ケーブルなしで、つまり無線で情報を伝送することです。RFを使用して情報を伝送するには、発生する電磁界の1つまたは複数の特性を変化させる必要があります。このプロセスを変調と呼びます。

放射電磁界の特性を変化させる最も単純な方法は、単にオン/オフを切り替えることです。これはモールス符号の基本的な動作原理です。RFを短時間オンにした場合は短点、長時間オンにした場合は長点を表します。このような「オン/オフ」法の次の段階として、振幅変調(AM)があります。この方式では、RFの強度を変化させることで情報を伝達します。周波数変調(FM)では、送信する情報に応じて、放射されるRFの周波数を変化させます。

AMとFMは、主にラジオ放送などのアナログ変調に用いられます。デジタル情報の送信にはもっと複雑な変調方式が必要であり、多くの場合、RFの振幅と位相または周波数シフトの両方が変更されます。

振幅変調(AM)

周波数変調(FM)

RF周波数の説明

RFの定義はきわめて広い範囲の周波数を表しますが、実際に使用される周波数は主にアプリケーションによって決まります。

周波数を低くすると、2つのことが起こります。第1に、放射電磁界が伝わる距離が長くなります。第2に、低い周波数の信号のほうが、物体に浸透したり物体を通過したりしやすい傾向があります。高い周波数の場合は逆のことが言えます。AMラジオ放送で用いられる周波数は数100 kHz、FMラジオ放送は100 MHz前後です。こういった比較的低い周波数の信号は、何キロメートルも先まで届き、家やビルの中でも受信できるからです。

Wi-Fiで用いられるのは2.4または5 GHz、すなわちAMやFMより25~50倍高い周波数です。このような高い周波数を使用する理由の1つは、Wi-Fi信号はあまり遠くまで届く必要がないことにあります。あるアクセスポイントの信号は、他のアクセスポイントにとってはノイズあるいは干渉でしかないからです。Wi-Fi信号は、家やビルの外部ではあまり遠くまで届きません。

世界のほとんどの地域で、特定の周波数または周波数レンジを使用する権利は、政府または規制機関によって管理されています。米国の場合、これを担当しているのは連邦通信委員会(FCC)です。特定の周波数を使用する「ライセンス」を取得するには費用がかかることが多く、その金額はかなり大きくなる場合があります。例えば、セルラーネットワーク事業者は、特定の周波数を排他的に使用する権利のために、何十億ドルもの金額を支払っています。

RFの安全性

X線、ガンマ線、紫外線(UV)などの放射エネルギーは、電離放射線と呼ばれます。電離と呼ばれるのは、このエネルギーによって原子や分子が破壊されることがあるからです。そのため、DNAが損傷されて、特定の種類のがんやその他の健康上の問題が起きることがあります。

RFは非電離放射線であり、原子や分子を破壊することはありません。だからといって、RFが完全に無害だとは言えません。RFには加熱効果があるので、レベルが非常に高い場合には、組織の損傷を引き起こします。ただし、一般的なパワーレベル、すなわち「通常の」状況では、RFが生物に重大な危険を及ぼすという確実あるいは決定的な証拠はありません。ただし、ハイパワーのトランスミッターは実際に注意が必要で、RF暴露に関する規制や業界の指針に準拠する必要があります。

まとめ

  • 交流電流からは電磁界が発生します。
  • この電磁界の周波数が空間内を伝わるのに十分高い場合、これを無線周波数(RF)と呼びます。

RFは主に3つの分野で用いられます。

  • 1つ目は、ケーブルを使用せずに長距離の情報伝送を行うためです。テレビ放送やラジオ放送、衛星通信、携帯電話、Wi-Fiなどがその例です。
  • 2つ目は、物体の検知/検出です。レーダーや空港のボディースキャナーがその例です。
  • 3つ目は、物体の加熱です。電子レンジや産業用アプリケーションがその例です。

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