ラボおよびフィールド環境におけるC-V2Xアプリケーションのシナリオベースのテスト

セルラーV2X(C-V2X)接続の検証用に詳細なトラフィック状況を設定してシミュレート

ラボおよびフィールド環境におけるC-V2Xアプリケーションのシナリオベースのテスト

課題

ここ数年、自動車メーカーと政府機関は、交通安全対策の強化、車両通行の管理の効率化、および将来的には快適性の向上を実現する方法を模索してきました。次世代V2X(Vehicle-to-Everything)情報通信テクノロジーは、今後のドライバー支援システムに新たな局面を加えることを目指して、低遅延のV2V(Vehicle-to-Vehicle、車車間)、V2I(Vehicle-to-Roadside Infrastructure、路車間)、およびV2P(Vehicle-to-Pedestrian、車歩行者間)通信を提供します。

3GPPリリース14のセルラーV2X(C-V2X)は、物理通信インタフェースとしてLTEテクノロジーを使用しています。この規格には、2つのモードがあります。Vehicle-to-Network(V2N)モードでは、Uuインタフェースと従来のセルラーリンクを経由して通信が行われ、エンドツーエンドソリューション向けのクラウドサービスを実現可能です。これは、地域の道路や交通の情報を車両に配信するために使用することができます。2番目のモードはダイレクトモードまたはサイドリンクモード(V2V、V2I、V2P)で、PC5インタフェースを経由して通信が行われます。この場合、C-V2Xは必ずしもネットワークインフラを必要としません。GNSSを時間同期のための主要ソースとして使用することで、SIMやネットワークの支援がなくても動作することができます。システムの機能と性能を実際のフィールドテストで検証することは、時間的にもコスト的にも負担が大きく、非常に困難な場合があります。機能や関連する支援機能の要件は常に変化しています。テストソリューションは、開発および導入の段階にて規格コンプライアンスを検証します。PC5ダイレクト通信モードは、時間的制約のある安全関連情報を非常に高い信頼性を確保してやり取りします。無線機テスタとC-V2Xシナリオのシミュレーションツールを併用すると、再現可能なテストシナリオを実現することができます。これは、信頼できる比較可能な結果を得るためのC-V2X検証プロセスの標準化に不可欠です。それだけでなく、異なるベンダーの2つのC-V2X機器間で、適切なエンドツーエンドの機能性を実証するのに役立ちます。プロトタイプモデルが十分な開発段階に達したら、TCUをホスト車両に統合して、C-V2Xネットワーク環境の性能試験場で検証することができます。

ラボおよびフィールド環境におけるC-V2Xアプリケーションのシナリオベースのテスト

ローデ・シュワルツのソリューション

車載用テストツールのプロバイダーであるVectorとローデ・シュワルツは、安全性が重要視されるC-V2Xアプリケーションをラボおよびフィールド環境でテスト/検証するための、新しいアーキテクチャーを開発しました。ローデ・シュワルツのテストセットアップは、R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テスタとR&S®SMBV100B GNSSシミュレータを、包括的なVector CANoeと結合した構成となっています。Car2xシミュレーションツール R&S®CMW500は、C-V2Xソフトウェアパッケージを使用して物理層とMAC層をシミュレートし、PC5無線インタフェースを経由してデータを送受信します。Vector CANoe.Car2x シミュレーションツールと組み合わせれば、R&S®CMW500をフィールド評価にも使用することができます。R&S®SMBV100Bは、ラボ環境にてGNSS信号発生器として機能します。これは、C-V2Xモードでの圏外通信用の正確な同期情報と、被試験デバイス(DUT)に対する非常に正確な位置情報を提供します。これは、V2Xの基本安全メッセージ(BSM)に必要です。Vectorツール用のR&S®CMW-KAX550 LTE V2Xテストスイートは、測定器をCANoeにリンクします。V2Xアプリケーションテスト用のCar2xソフトウェア環境。Vectorツールでは、トラフィックシナリオの構成と実行により、電子制御ユニット(TCU)の機能を徹底的にテストできます。ユーザーは、対象アプリケーションのセキュリティーおよび証明書管理を含めたC-V2X接続を検証する際、詳細なトラフィック状況を設定してシミュレーションを行うことができます。扱いやすいグラフィカルなシナリオエディターが装備されているため、トラフィックシナリオの作成が容易です。シナリオが開始されると、CANoe.Car2xは、仕様に従ってターゲット市場(北米、ヨーロッパ、中国)向けの関連ITSスタックバリアントを使用し、構成されたテストシナリオに基づいて対応するITS通信メッセージを作成します。シナリオのメッセージとルート情報は、R&S®CMW-KAX550 LTE V2Xテストスイートを介してR&S®CMW500とR&S®SMBV100Bに転送され、DUTに対する無線アクセス層を提供します。これにより、特定の状況に合わせてC-V2X対応TCUをシミュレートし、以下のような実装機能をテストできます。

  • 緊急ブレーキ警報(EBW/EEBL)
  • 左折アシスト(LTA)
  • 交差点衝突警報(ICW)
  • シミュレーション対象の自動車が複数台ある輻輳制御
ラボおよびフィールド環境におけるC-V2Xアプリケーションのシナリオベースのテスト

ローデ・シュワルツのテストシステムは、見通し外通信、微弱なGNSS信号、または渋滞などの条件をシミュレートします。R&S®CMW500 無線機テスタは、仮想の車両信号を無線で送信することもできます。さまざまなトラフィックシナリオにおけるC-V2Xアプリケーションを検証することができます。追加のR&S®BBA 線形広帯域アンプは、必要な電界強度を生成します。従来は複数のテスト車両が必要だったテストが、1台の物理的自動車と複数の仮想車両で実施できるようになります。C-V2Xのカバレッジと性能は、R&S®TSMx PC5ネットワークスキャナーによりリアルタイムでモニターすることができます。試験場でのデータは、ラボでのさらなる開発に使用することができます。

アプリケーション

ここで紹介したテストソリューションを使用すると、安全性が重要視されるC-V2Xアプリケーションをラボおよびフィールド環境でテストすることができ、信頼性の高い、再現可能な結果が得られます。Vector CANoe.Car2xソフトウェアツールとローデ・シュワルツの測定器を組み合わせることにより、複雑で再現性の高いC-V2Xシナリオを作成し、設定された状況に従ってC-V2X対応TCUをシミュレートし、対象を定めた実装機能テストを実施できます。このテストソリューションは、将来を見据えた投資です。オプションの拡張により、R&S®CMX500 無線機テスタを使って5G New Radio(5G NR)を含む今後のC-V2Xリリースに対応することができます。

まとめ

ローデ・シュワルツのC-V2Xテストソリューションは、物理層からアプリケーション層までの開発エコシステム全体に対応しています。テスト機器は、ラボおよびフィールドでの使用に最適で、測定結果の再現性と投資コストの削減を確保することができます。