R&S®RTM上で信頼できるRMS結果を得るための手法

RMSは、電子計測において最も一般的なパラメータの1つです。数学的には、連続的に変化する値(波形)の2乗平均で、電圧の極性および電流の方向を考えなくてもよく、パワーを定量化する場合に、RMSを用いることで計算が簡単になります。

課題

電流信号や電圧信号の品質を評価する場合、ピークや周波数などの信号から直接求めることができますが、その他(クレストパワーなど)は計算する必要があります。通常、これらの計算は実効値(RMS)によってうまく表現することができます。電圧計または電流計を使用すれば、アナログ回路を使って2乗則の伝達関数や時間平均を適用して、RMS値を求めることができますが、このような回路は一般的に帯域幅に制限があるため、RF周波数には適していません。

電子計測ソリューション

高速ADCを搭載したオシロスコープでは、このような制限はありません。デジタイズされたサンプルは、通常、オシロスコープ上で自動測定されるRMS計算のベースとなります。ただ、実装に違いがあると、結果が異なる場合があるので、最適な方法を選択し、結果の確度/精度を高めるための方法および前提条件を理解することが重要になります。R&S®RTM2000は、各々の利点を持つ以下の3つの自動手法を提供します。

  • 標準的なRMS測定
  • R&S®RTM-K32オプションによる、広帯域RMS測定用のデジタルRMS変換機能
  • R&S®RT-Zxx アクティブプローブによる、高精度測定を実現するR&S®ProbeMeter機能
ADCでサンプリングされたRMS計算
ADCでサンプリングされたRMS計算

アプリケーション

デジタルオシロスコープのRMS測定

オシロスコープは、ADCでアナログ信号をサンプリングし、デジタイズされた値をバッファーメモリに保存しています。波形がトリガ条件を満たしていると、バッファー内のサンプルが捕捉メモリに送られ、再構築されて、トリガポイント周辺に表示されます。オシロスコープはこのプロセスを繰り返し、トリガ条件を満たす新しい値セットがあるたびに、画面上の波形をリフレッシュします。RMS測定では、オシロスコープは、捕捉メモリ内の波形サンプルを計算に使用します。これは、ほとんどのオシロスコープにある標準的な測定機能で、データは捕捉メモリにあるので、測定速度は波形の捕捉速度と同じく、高速です。

RMS測定へのオシロスコープのサンプリングの影響

測定は捕捉メモリを使って行われるため、異なるデシメーションや捕捉メモリ内の波形全体の形状に起因するサンプリング方法の変更は、結果に大きな影響を及ぼします。繰り返し波形や十分なサンプルがある場合は問題ありません。デシメーションモードでは、ADCのサンプルが捕捉メモリに選択的に保存されますが、計算に限界が生じ、測定確度や帯域幅が低下する可能性があります。一部のオシロスコープアーキテクチャーでは、表示サンプル(ピクセル化後)で測定が行われるため、RMS測定の確度がさらに低下します。

RTM-K32と処理ブロックに示されたRMS測定
R&S®RTM-K32と処理ブロックに示されたRMS測定

R&S®RTM-K32 DVMオプション

捕捉メモリのサンプルに基づいた自動測定とは異なり、R&S®RTM-K32は、波形の捕捉に関係なく、RMS値をADCのサンプルから直接計算します。結果は、捕捉メモリの波形形状とサンプリング方法によって異なります。R&S®RTM2000 ADCは、5 Gs/sのサンプリングレートで動作するため、DVMは2.5 GHz(ナイキスト周波数)までの信号を測定できます。計算はADCのすべてのサンプルに対して行われるため、収集が完了しなくても測定は可能です。

この手法のもう1つのポイントは、R&S®RTM2000に各チャネル用のADCが装備されているので、R&S®RTM-K32 DVMを使用すれば、チャネルごとに最大4つの測定を同時に実行できるところです。RMS測定だけでなく、ADCのサンプルに基づいたDC、ピーク、波高、周波数の直接測定も可能です。

R&S®RTM-K32 DVMの精度

電圧計の重要なパラメータの1つは精度です。精度は通常、測定結果の桁数で指定されます。R&S®RTM-K32は、ADCのサンプルを直接使用し、振幅の読み値については最高3桁の精度、周波数カウンターについては7桁の精度を備えています。この精度によって、ほとんどのアプリケーションに対応できます。複数のチャネルがあり、パラメータを同時に測定できることがより重要になります。

R&S®ProbeMeter

精度が重要な場合は、R&S®ProbeMeterを用いることによって、さらに高い確度を得ることができます。24ビットのADCを備えているので、0.1 %のDC測定確度を実現します。図に示すように、R&S®ProbeMeterでは、オシロスコープのフロントエンドADCをバイパスすることができるので、測定器のチャネル設定に関係なく、常にフル・ダイナミック・レンジでの測定が可能です。

差動プローブR&S®ProbeMeter
差動プローブR&S®ProbeMeter

まとめ

R&S®RTM2000には、RMS測定用のオプションがいくつかあります。内蔵の自動測定機能は、簡単に実行できますが、波形の繰り返し、サンプリングレート、デシメーションの影響による制限を受けます。R&S®RTM-K32 DVMオプションは、直接サンプリングされたADCのデータを使用することにより、RMS測定の確度が向上し、最高5 Gs/sのサンプリングレートと、4つの電圧測定と2つのカウンター測定の同時実行機能を提供します。最高の精度が必要な場合は、ローデ・シュワルツのアクティブプローブをご検討ください。このプローブにはR&S®ProbeMeterが付属しているので、プローブのフル・ダイナミック・レンジにわたって0.1 %の優れた確度を実現できます。

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