4G/5G次世代eCallの効率的な検証

制御されたネットワーク条件下で行う4G/5G次世代eCall(NG eCall)モジュールのエンドツーエンドのコンフォーマンステスト

NG eCallエンドツーエンドのコンフォーマンステストのセットアップ
R&S®CMX500 無線機テスタ、R&S®SMBV100B ベクトル信号発生器(GNSSシミュレータ)、R&S®CMX-KA098 包括的eCall検証ソフトウェアで構成されたNG eCallエンドツーエンドのコンフォーマンステストのセットアップ
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課題

eCallは、重大な事故が発生したときに欧州の緊急電話番号112に自動的に通報する車載用システムです。現在、eCallシステムは2G GSMまたは3G UMTSネットワークを使用していますが、欧州では今後数年のうちにこれを4G LTEおよび5G NRネットワークに置き換える予定です。この変更は112緊急通報にも影響し、112は、IPマルチメディアサブシステム(IMS)をイネーブラーとして使用するIMS緊急通報に置き換えられることになります。

車両に搭載されているNG eCallシステムの機能とコンプライアンスが適切であることを保証するために、自動車メーカーは、CEN、ETSI、UN、ユーロNCAPなどの機関が定める規制/規格に準拠する必要があります。たとえば、NG eCallシステムのための技術的仕様であるCEN/TS 17240への準拠が求められます。これには、最小データセット(MSD)の適正な送信、位置精度、緊急通報中に音声通話が途切れないことのテストが含まれます。

メーカーは、NG eCallの開発および車両への統合の早い段階で包括的な手法を採用して、関連するすべての規制/規格への準拠を確認する必要があります。実際のモバイルネットワーク環境および衛星環境でのフィールドテストのみでNG eCallシステムのコンフォーマンスをテストして将来の車両を準備しようとすると、時間とコストがかかり、困難になる可能性があります。これは特に、IMS(コアネットワークの一部)に関連するテストに当てはまります。そのテスト結果は、そうした環境では取得するのが難しく、再現性がありません。認定済みのテストソリューションを使用すれば、システムのあらゆる側面を徹底的にテストして再現性の高いテスト環境で信頼性、安全性、有効性を確保でき、遅れやコストの増加を回避することができます。これらのテストソリューションにより、NG eCallモジュールが必要な規制を満たしていることを確認できます。

IVSでの次世代eCall機能の検証用の基本セットアップ
IVSでの次世代eCall機能の検証用の基本セットアップ
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ローデ・シュワルツのソリューション

ローデ・シュワルツは、NG eCallモジュール用のテストシステムを提供しています。
このシステムは以下で構成されています。

  • R&S®CMX500 無線機テスタ
  • R&S®SMBV100B ベクトル信号発生器(GNSSシミュレータ)
  • R&S®CMX-KA098 包括的eCall検証ソフトウェア

R&S®CMX-KA098ソフトウェアは、NG eCall対応の公衆安全応答ポイント(PSAP)をシミュレートし、R&S®CMX500を制御することにより、4G LTEまたは5G NRセルラーネットワーク(必要なIMSインフラを含む)をシミュレートします。

このセットアップはラボ内で完全に管理でき、eCall車載システム(IVS)が以下の動作を実行できるかどうかを検証します。

  • 4Gまたは5Gを介してNG eCallを開始する。
  • 適正なネットワークを選択する。
  • GNSS位置を取得する。
  • GNSS位置を含む、正確なMSDを送信する。
  • PSAPに対してVoice over LTE(VoLTE)またはVoice over NR(VoNR)を介した音声接続を確立する。
eCall通話品質テストのセットアップ
eCall通話品質テストのセットアップ
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受信されたMSDデータは、生でもデコード形式でも使用でき、位置情報などの必須フィールドを含むすべての送信値が表示されます。このテストは、実環境のモバイルネットワークと独立したシミュレーション環境で行われるため、リスクなしで112通報を発信できます。

R&S®SMBV100BはGNSS信号発生器として機能できるため、IVSのMSDに基づいた位置精度の測定が可能です。さらに、GNSSレシーバーの精密な性能テストも可能です。

NG eCallテストを簡素化するために、R&S®CMWrun シーケンサ・ソフトウェアツールを使用できます。これは、関連規格に準拠したエンドツーエンドのコンフォーマンステストにすぐに使用できるテストシーケンスを提供するツールです。

  • R&S®CMX-KF671Bオプションを使用すれば、NG eCallがCEN/TS 17240規格に準拠していることをテストできます。
  • R&S®SMBV-KT361パッケージは、R&S®CMWrunによるGNSSレシーバーテストを自動化します。

使いやすいインタフェースで必要なテストシーケンスを選択して結合すれば、ソフトウェアが測定器とPSAPをリモートで自動的にセットアップします。選択したテストが実行され、各テストケースの合否判定を記載した詳細なテストレポートが作成されます。

自動車メーカーは、最適なeCall音声品質を実現するために、HEAD acousticsの音声/オーディオ品質テスト用labCOREモジュラーハードウェアプラットフォームを用いてテストシステムを拡張できます。R&S®CMX500は、制御可能な4G/5Gモバイルネットワークをシミュレート可能で、これにHEAD acousticsのlabCOREとACQUAソフトウェアを組み合わせれば、高精度の通話品質解析を実現することができます。ACQUA測定/解析ソフトウェアを使用すればオーディオ遅延と音声品質を測定でき、車両に搭載されたeCallなどの音声アプリケーションで緊急時に信頼性の高い通信と最良の音声品質を確保できます。

まとめ

R&S®CMX500 無線機テスタとR&S®SMBV100B GNSSシミュレータをベースとしたテストシステムでは、GNSS性能測定および自動化コンフォーマンステストを含む、NG eCallモジュールの独立したテストが可能です。R&S®CMWrun シーケンサ・ソフトウェアツールは、すぐに使用できるテストシーケンスと詳細なテストレポートによりNG eCallテストを簡素化します。自動車メーカーは、最適なeCall音声品質を確保するために、HEAD acousticsの高精度通話品質解析用labCOREを追加してテストシステムを拡張することができます。このプロセスにより、車両に搭載されたeCallなどの音声アプリケーションで緊急時に信頼性の高い通信と最良の音声品質を確保できます。

これらのテストソリューションにより、NG eCallモジュールが必要な規制を満たしていることを確認できます。