TACAN/DME地上機器の解析

R&S®EDST300を使えば、TACANおよびDME地上局の精密な解析を効率的に行えるので、試運転や定期保守に最適です。

背景

TACANおよびDMEは、周波数レンジ962 MHz1213 MHzのパルス信号を使用する地上航法システムです。どちらのシステムも、民間航空機では、航空機から地上局までの直線距離を求めるために使用されます。軍事航空機の場合は、これに加えて、TACAN局から提供される航空機と地上局の間の方位角情報も使用されます。

距離を求めるために、航空機のインテロゲータはダブル・パルスを送信します。地上局(トランスポンダ)は、内部におけるメイン遅延の後で、63 MHzのオフセットでこの要求パルスに応答します。航空機のレシーバーは、ダブルパルスのラウンドトリップ時間に基づいて、地上局までの距離(直線距離)を判定します。

DMEシステムの簡略化した説明図
DMEシステムの簡略化した説明図
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DME信号のタイミング
DME信号のタイミング

課題

ILS、TACAN、DMEなどの地上航法システムには、きわめて厳格な安全要件が課されます。正確な動作とワールドワイドでの互換性を保証するために、国際民間航空機関(ICAO)によって重要なパラメータが標準化されています。サービス・プロバイダは、TACAN/DME地上局の定期的な監視、チェック、校正を行って、仕様との適合性を確認しています。これは、公共の安全の確保と軍事利用にとって不可欠な作業です。このためには、堅牢で信頼性の高いテスト機器が必要です。このような機器は、校正から設置、定期保守までのすべての関連要件を満たす必要があります。

電子計測ソリューション

R&S®EDST300 TACAN/DME局テスタは、携帯に便利なバッテリー動作のアナライザであり、パルスド地上航法システムのコミッショニング、テスト、サービス用に設計されています。関連する民間および軍事規格に規定されているすべてのTX/RX測定を、正確かつ効率的に実行できます。R&S®EDST300は、広いダイナミックレンジとコンパクトなデザインを備え、地上局のRF出力の解析に加えて、R&S®EDST-Z1 テスト・アンテナと組み合わせることにより、フィールドでの測定にも最適です。

R&S®EDST300は、方向性結合器またはアッテネータ経由で、DMEまたはTACAN地上局に接続するだけで使用できます。DMEチャネル周波数を選択し、内蔵インテロゲータ(R&S®EDST-B2オプション)で外部アッテネータとスイッチを設定すると、ただちに測定を開始できます。測定パラメータとしては、オンチャネル・ピーク/平均パワー、トランスミッター周波数、パルス間隔(コーディング)、パルス繰り返しレート、メイン遅延、応答効率、IDコードがあります。

EDST300 DME/TACANのメインビュー
R&S®EDST300 DME/TACANのメインビュー
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インテロゲータのTXピークパワーを変更すると、レベルパラメータによる応答遅延の変動が生じます。TACAN/DME地上局の感度を判定するには、応答効率が70 %に低下するまでピークパワーを下げていきます。さらに、R&S®EDST300は、隣接チャネル除去比とデコーダー除去比を簡単に測定でき、毎秒最大6000個のTXパルスペアによる負荷テストを実行できます。

R&S®EDST300のパルスビュー
R&S®EDST300のパルスビュー
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被試験局のパルス帯域幅測定を実行するには、RX周波数を±800 kHzおよび±2 MHzオフセットにチューニングします。R&S®EDST300は500 kHzの解析帯域幅を備えているので、結果をオンチャネル・ピーク・パワー測定と直接比較して、スペクトラムマスクを確認できます。パルス・ビュー・モード(R&S®EDST-K2オプション)では、最初と2番目のパルスに対して、パルスの立ち上がり時間、立ち下がり時間、持続時間を自動的に測定できます。このモードでは、ピーク偏移も測定でき、TACAN局のMRBやARBなどのドループ測定もサポートされます。また、R&S®EDST300は、IDをデコードして、IDコード・タイミングの詳細な測定を行います。これには、ID期間、ドット/ダッシュ長、ドット/ダッシュおよびレター・ギャップ、イコライザ・パルス時間が含まれます。

EDST300 TACAN測定
R&S®EDST300のTACAN測定
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R&S®EDST-K1オプションは、専用のTACAN解析機能をR&S®EDST300に追加します。これには、メイン・リファレンス・バースト(MRB)と補助リファレンス・バースト(ARB)の解析と、それぞれのパルス繰り返しレート、パルス・カウント、パルス間隔の判定が含まれます。

フィールドでTACAN信号を測定するには、R&S®EDST-Z1テスト・アンテナをR&S®EDST300に接続します。TACAN方位に加えて、15 Hzおよび135 Hz AM信号成分の変調度および変調周波数が測定され、位相関係が求められます。

まとめ

R&S®EDST300は、柔軟でコンパクトで使いやすいソリューションであり、民間と軍事の両方の規格に準拠したテストケースを1台で実行できます。いくつかの測定(デッドタイム、回復時間、エコー抑圧度など)には、もう1台の信号源が必要です。R&S®SMBV100A ベクトル信号発生器を使用すれば、DME/TACAN局に対して要求されるすべてのテストケースを実行できます。