IVSの次世代eCall機能の検証

eCallは欧州で配備されており、2018年3月現在、新車への装備が法律で定められています。次世代eCall(NG eCall)は、LTEと5G上に構築されます。

IVSでの次世代eCall機能の検証用の基本セットアップ。
IVSでの次世代eCall機能の検証用の基本セットアップ。
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課題

eCallは欧州で配備されており、2018年3月現在、新車への装備が法律で定められています。現在のeCallの配備はETSI規格とCEN規格に基づいたもので、規格の策定開始から10年以上経過しています。このシステムでは、バンド内モデムを使用し、緊急通報112を経由して回線交換(CS)GSM音声チャネルでeCall最小データセット(MSD)を伝送します。システム普及率は、2035年までに100 %に達すると見込まれています。欧州のプロバイダーは、今後10年間でCS GSMネットワークとUMTSネットワークのサポートを段階的に廃止し、4G LTEおよび5Gインフラに置き換える意向をすでに発表しています。その影響は、緊急通報112にも及びます。LTE、5Gなどのパケット交換(PS、IPベース)ネットワークの場合、112は、IMS緊急通報に置き換わります。この新しい環境には、従来のeCall方法と比較すると、機能面で大きな利点があります。

NG eCallはLTE上に構築されているため、はるかに高速で、より信頼性の高いMSD転送が保証されます。MSD伝送中に音声通信が中断されないほか、IPネットワークでは140バイトを超える送信など、機能拡張の追加が容易です。ダッシュカメラからのビデオ、音声からのテキスト、または自動車機能のリモート制御(例えば、クラクションを鳴らす、ライトを点滅させる、ドアをロック/ロック解除する、イグニッション回路を遮断するなど)といった、追加メディアの転送も可能となります。ただし、自動車の使用年数は通常、約15年間であるため、この変更は、自動車メーカー(OEM)とそのサプライヤー(Tier1)にも影響を及ぼします。課題の1つが、バンド内モデムのeCall配備のサポートを継続しながら、ネットワークテクノロジーを完全なIPベースのシステムに移行し、次世代eCallに対する車両の準備を整えていくための体制作りです。

安全システムであるため、eCallには高い信頼性が求められ、MSDデータを正しく伝送する必要があります。とりわけバックエンドのテクノロジーが劇的に変化する際(CSベースのネットワークからPSシステムへの変更など)、セルラーネットワークではこの点が特に重要となります。NG eCallシステムの性能テストや将来に向けた車両計画において、実際のモバイルネットワークや衛星環境でのフィールドテストに手段が限定されると、環境条件が変わる可能性があり、時間もコストもかかるため非常に困難な作業になりがちです。また、テスト結果、特にIMS(コアネットワークの一部)に関するテスト結果は、そうした環境では取得するのが難しく、再現性がありません。

電子計測ソリューション

ローデ・シュワルツは、GSMベースのeCall向けに市場をリードするテストソリューションを提供しています。電子計測の専門家が、R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テスタの機能をR&S®CMW-KA096 LTEベースNG eCall用テストソフトウェアによって拡張しました。

R&S®CMW-KA096 アプリケーションソフトウェアがNG eCall対応の公衆安全応答ポイント(PSAP)をシミュレートし、R&S®CMW500をリモート制御することにより、LTEセルラーネットワーク(必要なIMSインフラを含む)のシミュレーションを行います。すべてをラボで完全に制御できます。

ここで説明するセットアップを使用すると、例えば、eCall車載システム(IVS)がNG eCallのトリガ、適切なネットワークの選択、正しいMSDデータの送信、およびPSAPに対するVoice over LTE(VoLTE)コールを経由した音声接続の確立を実行できるかどうか確認することができます。受信したMSDは、RAW形式とデコード形式で使用可能です。MSDは、位置情報などの必須フィールドを含む、すべての送信値を表示します。実世界のモバイルネットワークとは完全に独立して実行できます。このソリューションをR&S®SMBV100A ベクトル信号発生器と組み合わせると、受信したMSDに基づいたGNSS位置精度測定にも対応できます。

車両緊急サービス(eCall、ERA-GLONASS、NG eCall)のテストセットアップ。
車両緊急サービス(eCall、ERA-GLONASS、NG eCall)のテストセットアップ。

R&S®CMW500とR&S®CMWKA094/-KA095 PSAPオプションおよびR&S®SMBV100Aの組み合わせは、eCallモジュールとERA-GLONASSモジュールのファンクションテスト、規格に準拠したコンフォーマンステスト、パフォーマンステスト用の強力なソリューションです。R&S®CMW-KA096 次世代eCall用拡張により、将来のLTEおよびIMSベースの車両用eCallシステムに向けた準備にすぐに着手できます。すべてをラボ環境で行えるため、時間の短縮、コストの削減、フィールドテストの労力の最小化が可能です。このセットアップは、マルチセルシナリオへのアップグレードも簡単です。マルチセルシナリオは、ネットワークまたはPSAPでのNG eCallサポートが制限されている段階での相互運用性テストで重要となります。この場合、システムは、バンド内モデムを使用してレガシーeCallに必要なフォールバックシナリオをテストする必要があります。

ローデ・シュワルツのこのテストソリューションは、レガシーeCallだけでなく、LTEおよびIMSベースの次世代eCallシステムのテストにも対応するための、将来に備えた投資です。