パルス記述子ワードのインポートと再生を簡単に

R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアは、パルス記述子ワード(PDW)のリストをインポートするためのインタフェースを提供します。PDWリストをインポートする前に、ソフトウェアで特定のPDWフォーマットを定義することができます。R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアが、解釈されたPDWリストをR&S®SMW200Aに自動的にアップロードし、最もアジャイルなレーダー信号を発生させます。

課題

通常、レーダーエンジニアは、ラボでレーダー受信機の性能を検証するため、以前に記録した信号をレーダーシナリオから再生することを希望します。記録した信号は、実環境シナリオのライブ記録からの信号、またはシミュレーションソフトウェアによって作成されたシナリオからの信号である可能性があります。例えば、動いているエミッターを記録またはモデル化するためのレーダーシナリオの持続時間は数分におよぶことがあるため、従来のARB波形ファイルとしてストアすると、結果ファイルのサイズがすぐにギガバイトの範囲に達します。ARB波形ファイルは、シナリオをすべての詳細や最大の信号情報コンテンツと共に記録するには適したソリューションです。

信号ファイルのメモリ要件を最小限に抑えるため、レーダー受信機およびシミュレーションソフトウェアは、レーダーシナリオをPDWのリストとして記録します。PDWは、パルスの持続時間、パルス・トップ・パワー・レベル、搬送波周波数といったすべてのパルスパラメータを、パルス開始時間を定義するタイムスタンプと一緒に記述します。

PDWには、使用されるパルス変調(MOP)に関する情報を含めることも可能です。現在、レーダーエンジニアが必要としているのは、以前にストアしたPDWを実際のレーダーRF信号に変換するメカニズムです。

PDWリストのインポートと再生の概念
PDWリストのインポートと再生の概念

必要な作業は、PDWリストをインポートし、R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアにPDWリストのPDWフォーマット記述を提供することだけです。特定のフォーマット要件を満たすため、サンプルPDWフォーマットファイルを簡単に変更できます。したがって、特定の既知フォーマットに限定されずに、必要なPDWフォーマットに合わせてR&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアをカスタマイズすることができます。

電子計測ソリューション

R&SSMW-K300オプションとR&S®SMW-K501/-K502オプションを搭載したR&S®SMW200Aを、R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアと組み合わせると、レーダーエンジニアは、最もアジャイルなレーダー信号をPDWリストの定義どおりに発生させることができます。特定フォーマットをソフトウェアに提供するためのPDWフォーマットファイル(特定のフォーマットのPDWリストの記述)は、ユーザーが作成できます。PDWフォーマットファイルを使用すると、レーダーエンジニアはPDWリストを直接インポートできます。再フォーマットの必要はありません。

R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアが、インポートされたPDWリストをPDWフォーマットファイルの指定どおりにローデ・シュワルツ固有のフォーマットにマッピングし、R&S®SMW200A ベクトル信号発生器にアップロードします。R&S®SMW200A 信号発生器の強力なベースバンドハードウェアにより、変換済みのPDWリストのアップロードファイルが解釈され、定義されたレーダー信号が作成されます。

PDWフォーマットファイル

PDWフォーマットファイル(テンプレート)には、ユーザーのPDWリストの全体的なフォーマット構造が記述されており、時間、周波数、MOP形式などのパルス情報が含まれます。時間形式は、絶対または相対タイムスタンプとして指定できます。タイムスタンプは、パルスの開始時間を定義します。オプションとして、タイムスタンプの代わりに、パルス繰り返し時間とパルス幅だけを指定することも可能です。周波数は、絶対周波数値(搬送波周波数)、任意の搬送波周波数に対する周波数オフセット、または両方の組み合わせとして指定できます。PDWフォーマットファイルには、パルス・レベル・オフセットとパルス開始位相を指定する情報を含めることもできます。下の図に、PDWフォーマットファイルの主なコンテンツの概要を示します。

PDWによって定義されたパルスのリアルタイム再生

非変調方形パルス、Barkerコードパルス、または線形周波数変調(LFM)を持つパルスのみが含まれるPDWリストをリアルタイムで作成できます。R&S®パルスシーケンサソフトウェアが、任意のオフセットを持つすべての解釈済みPDWが含まれた、シーケンス設定リストを計算します。シーケンス設定リストがR&S®SMW200Aにアップロードされ、設定されている搬送波周波数で再生されます。任意のレベルオフセット(アンテナパターンをモデル化する場合など)、周波数オフセット(シナリオをホッピングする場合など)、パルス幅変更が、リアルタイムで適用されます。R&S®SMW200Aは、PDWタイムスタンプによって定義された時点でパルスを作成します。R&S®SMW-K502オプションを使用すると、1秒あたり330万パルスまでの最大パルス密度を実現できます。

PDWフォーマットファイルの主なコンテンツ
PDWフォーマットファイルの主なコンテンツ

PDWによって定義された変調パルスの再生

独自の機能として、R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアでは、変調パルスを記述するPDWの再生が可能です。振幅変調、位相シフトキーイング、非線形周波数変調(NLFM)など、複数の変調方式をサポートします。変調方式は、PDWフォーマットファイルでも定義できます。R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアが、PDWリスト内の定義済みパルスを解釈し、各変調パルスに対する固有波形セグメントを計算します。

波形セグメントは、シーケンス設定リスト内で参照されます。これもR&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアによって計算されています。パルス中断は、各波形セグメントにタイムスタンプを割り当てることによって実現します。パルス休止を満たすためのI/Qサンプルは不要です。シーケンス設定リストは、計算された波形セグメントを参照します。リストには、適用可能なオフセット値とタイムスタンプがすべて含まれます。ここでも、すべてのオフセットがリアルタイムで適用されます。波形セグメントはシーケンス設定リストと共にR&S®SMW200Aに自動的にアップロードされ、PDWで定義された搬送波周波数で再生されます。I/Qセグメントの使用時にR&S®SMW-K502オプションを用いると、100万パルス/秒の最大パルス密度を実現できます。

ソフトウェアのインポートメカニズムは柔軟性に優れているため、非変調パルスを記述するPDWと、MOPのパルスを記述するPDWが混在した状態でも、一緒にインポートして再生することができます。これは、レーダーエンジニアにとって大幅な時間の節約となり、本来の業務であるレーダー受信機やコンポーネントのテストへの専念が可能となります。PDWの再生が、これまで以上にすばやく簡単に行えます。

主な特長

  • PDWリストの迅速かつ簡単なインポートと再生
  • R&S®SMW200Aによる、2 GHz帯域幅内のアジャイルレーダー信号の再生
  • PDWリストのインポートの柔軟性を最大化する、ユーザー定義可能なPDWフォーマットファイル
  • MOPのPDWと非変調パルスのPDWの同時再生