アンテナアレイ内の不具合のある単一エレメントの特定

近傍界範囲でのスキャンと、近傍界から遠方界への変換方法の適用により、アンテナアレイの単一エレメントの不具合を特定します。

課題

アンテナアレイは、衛星、レーダーなどのさまざまなアプリケーションで広く使用されています。アンテナアレイを使用する主な利点の1つが、ビームフォーミングです。アンテナの放射パターンに対する柔軟性と制御性が高いため、より効率の良い、指向性の強いビームが得られます。こうした理由から、基地局のみならず、モバイルバックホール、ポイントツーポイントアンテナなどの5Gインフラでも、大規模MIMOアンテナが重要な役割を果たしています。これらのアレイを使用すると、5Gでの非常に信頼性の高い低レイテンシー通信による、超大量データの送信を実現することができます。

アンテナアレイの設計と製造の複雑さを過小評価すべきではありません。特に、マイクロストリップ・パッチ・アンテナ・アレイなどのプレーナーデザインでは、RFサブストレートパラメータが製造ユニットごとに異なる場合、位相エラーが発生しやすくなります。アンテナアレイのRF性能と3Dアンテナパターンを無線でテストすることは可能ですが、測定結果が期待と異なる場合はどうなるでしょうか。アンテナエレメントのどれかに不具合があったとしても、64×64アンテナアレイ内のエラーを試行錯誤によって検出するには、時間もコストもかかりすぎます。したがって、それに代わる、より効率的なソリューションが見つかれば、時間と費用の大幅な節約になります。

アンテナアレイの振幅と位相の2次元等価電流プロット
アンテナアレイの振幅と位相の2次元等価電流プロット
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ローデ・シュワルツのソリューション

この問題を解決するため、ローデ・シュワルツは、振幅と位相に不具合がある個々のエレメントをアンテナアレイ内で効率的に特定するための、理想的なソリューションを開発しました。ソリューションを実装するには、アンテナチャンバーと高品質のベクトル・ネットワーク・アナライザ(R&S®AMS32 OTAパフォーマンス測定ソフトウェアを搭載したR&S®ZVAなど)が必要です。このセットアップにより、近傍界から遠方界への変換を、R&S®AMS32で用いられる高速不規則アンテナ電磁界変換アルゴリズム(FIAFTA)に基づいて行うことが可能になります。

アンテナアレイ内の不具合のあるエレメントを見つけるための測定手順では、まず、アンテナアレイの少なくともメインビーム領域をカバーした状態で電磁界測定を実行します。プローブアンテナが、3Dポジショナーを使用して方位角と仰角の両方を変えながら、サンプリンググリッドを測定します。測定後、後処理中にFIAFTAアルゴリズムを使用して、等価な電界による表面電流と等価な磁界による表面電流を任意の形状のオブジェクトにプロットできるようにします。両方のタイプの等価な表面電流をグラフィック表示することで、アンテナアレイ内の有効なエレメントと不具合のあるエレメントを簡単に視覚化して分離できます。

R&S®ATS1000には、3Dデータを取得するための高精度ポジショナーが含まれています。
R&S®ATS1000には、3Dデータを取得するための高精度ポジショナーが含まれています。
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アンテナ・テストチャンバー

スペースと周波数の要件に応じて、R&S®ATS1000 アンテナ・テストチャンバーとR&S®WPTC 無線性能試験電波暗室のどちらかを選択できます。R&S®ATS1000は、コンパクトなモバイル型テストチャンバーで、動作周波数18 GHz~87 GHzの範囲で直径40 cmまでのDUTに対応します。一方、R&S®WPTCは、周波数レンジとDUTサイズの点でより柔軟性が高く、400 MHz~90 GHzの範囲で直径1.2 mまでのDUTに対応します。

R&S®AMS32とFIAFTAアルゴリズム

R&S®AMS32は、関連するすべてのOTAおよびアンテナ測定をサポートするためにローデ・シュワルツが開発した、基本測定ソフトウェアです。R&S®AMS32-K50 NF-FF変換オプションを使用すると、FIAFTAに基づいて、近傍界から遠方界への正確な変換が行えます。このアルゴリズムはミュンヘン工科大学で開発され、遠方界測定の結果と高い相関があることが実証済みです。すべての形状の等価電流を視覚化するには、R&S®AMS32-K52とR&S®AMS32-K52Uオプションの両方が必要です。これらを組み合わせることで、アンテナアレイ内の不具合のあるエレメントの特定が容易になります。

主な特長と利点

  • 研究開発段階や製造時のサンプルテストでの
  • エラーの効率的な特定により
  • 製品化までの時間を短縮
  • アナログおよびデジタル移相器の検証
  • 位相分布の均一性検証
  • 複数のアンテナアレイでの再現性チェック
  • 短時間での視覚的確認

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