位相雑音解析を使用したDVB-Tトランスミッターの信号品質の最適化

DVB-T信号品質を確認するには、変調誤差比(MER)を測定します。ただし、信号を発生して送信するときにさまざまな干渉要因がトランスミッターで重なり合うため、小さいMERでは原因はわかりません。R&S®ETL TVテストレシーバーに独自の新しい測定機能が搭載され、変調器の位相雑音がどの程度MERに影響を与えるかを確認できるようになりました。

DVB-T信号のMER測定
この図は、変調器の望ましくない位相雑音の影響を主に受けたDVB-T信号の実証済みのMER測定を示しています。このコンスタレーションダイアグラムでは、原因は確認できません。R&S®ETLの独自の新しい測定機能を使用すれば、原因を可視化できます。
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課題

開発や製造を行うメーカーも、試運転や保守を行うネットワーク事業者も、効率的で信頼性の高いテレビ放送を実現するには、DVB-Tトランスミッターの品質をテストする必要があります。

干渉の影響を受けた信号が送信された場合には、信号のエネルギーが伝搬中に減少するため、DVB-Tの前方誤り訂正(FEC)が当初の予定より速く限界に達します。

範囲外のエリアをカバーするには、効率を犠牲にするしかありません。FECを強化するほどデータレートは低下し、プログラム容量は減少します。さらに、伝送パワーを上げると運用コストが増加します。

実証済みのMER測定によってDVB-Tトランスミッターの内の1台の品質が不十分であることがわかった場合は、適切な対策を講じるために、原因を特定することに特に関心があるはずです。ネットワーク事業者にとって、この解析のために送信信号を中断する必要のないことが重要です。

電子計測ソリューション

MERは信号に含まれるすべての不要な干渉の総和の指標なので、重要な品質基準となります。このような総和のエラー値の場合は、各干渉要因を解析することは通常できません。しかし、R&S®ETLでは、新しい測定手法(特許出願中)を用いてMER位相雑音を計算できます。この値はdB単位ですが、一般的なMER値とは異なり、位相雑音成分だけに基づいています。この新しい測定値が一般的なMER値をわずかに上回っている場合は、変調器の位相雑音が品質を低下させる主な要因となります。

この新しい測定手法では、位相雑音自体の原因を検出することも可能です。統合された画像表示は、位相雑音干渉のスペクトラム分布を示します。例えば、干渉が変調器の内部基準周波数上の主電源周波数のクロストークに起因する場合は、50/60 Hzの明確なピークとして、すぐに画像で確認できます。

スペクトラム解析では、さらに高い干渉周波数を検出できます。8kモードにおける8 MHz幅のDVB-T信号の上限は、ガードインターバルに応じて、446 Hz~540 Hzの範囲になります。2Kモードにおいては、最大4倍の高い周波数(最大2.1 kHz)も検出できます。

アプリケーション

測定例は、2.6 Hz~446 Hzの干渉周波数レンジへの位相雑音の影響を示しています。全位相雑音のMERは30.3 dBです(スクリーンショットの表を参照)。

位相雑音のスペクトラム分布からは、位相雑音のエネルギーが50 Hzであることがはっきりわかります。この周波数の干渉は、50 Hzの欧州の主電源周波数と相関関係にあります。

この例からは、以下の3つの結論が導かれます。

  • 位相雑音がDVB-T信号を著しく劣化させています。位相雑音は、29.9 dBの全MERの内の30.3 dBに寄与しています(スクリーンショットの一番下のステータスバー)。位相雑音は、最も重要な品質係数です。
  • 干渉固有の周波数は50 Hzです。
  • 図によると、この50 Hzの干渉は全MERの内の30.3 dBを占めています。全体の干渉に大きく寄与する周波数は他にありません。

この例では、修正作業を行う必要があります。テスト結果/測定結果は非常に役立ちます。新しいDVB-T MER位相雑音測定機能は、ファームウェアバージョン2.32以降のすべてのR&S®ETL アナライザ(「変調解析」)で追加料金なしでご利用いただけます。

ETLのMER位相雑音測定機能
R&S®ETLの新しい独自のMER位相雑音測定機能を使用すれば、MERが29.9 dBと小さい原因が一目でわかります(下部のステータスバーの中央)。この場合、50 Hzの不要な位相雑音(M1を参照)によって、主に信号品質がわかります。

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