高速で正確なパッシブ相互変調(PIM)測定

R&S®ZVAベクトル・ネットワーク・アナライザとR&S®BBA150広帯域アンプによる独自の自動レベル制御(ALC)ベースのテストセットアップを使えば、きわめて正確で再現性の高い結果を、最小限のテスト時間で得られます。

高速で正確なパッシブ相互変調(PIM)測定

課題

パワーレベルが非常に高い場合、ケーブル、コネクタ、(デュプレックス)フィルターなどのデバイスに、パッシブ相互変調(PIM)が発生することがあります。例えば、最新の無線通信システムでは、PIMは基地局トランシーバーで大きな問題になっています。PIM信号の周波数がデュプレックスフィルターのレシーバー経路の周波数と一致すると、レシーバーの感度が低下するからです。このため、製造時にデュプレックスフィルターのPIMをテストすることが重要になります。PIMを測定するには、被試験デバイス(DUT)に2つのトーンを印加する必要があります。理想的には、これらのトーンの周波数とパワーを掃引します。従来の複数の測定器(信号発生器とスペクトラム・アナライザ)を使用するテストセットアップでは、機能が制限され、測定器の制御と同期のためにプログラミング作業が必要になります。単一信号源のネットワーク・アナライザに基づいたソリューションも、外部信号発生器が必要で、制限のある測定構成しか実現できません。

もう1つの課題は、高いパワーレベルの安定した信号が必要なことです。パワーアンプの熱セトリング効果によって、出力パワーが変動します。校正済みの安定したパワーをDUTに供給するには、これに対処する必要があります。テスト機器とDUTの損傷を防ぐために、DUTの接続や取り外しの際には、アンプをいったんオフにして、後でまたオンにします。ただし、アンプをオンにした後では、動作が再び安定するまで、ある程度の時間をおくことが必要です。動作が安定するまでに必要な時間を予測するのは困難であり、製造環境では速度がきわめて重要であることを考えれば、パワーアンプが定常状態に達するまで待つのは望ましくありません。

ZVAの相互変調測定設定メニュー
R&S®ZVAの相互変調測定設定メニュー
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電子計測ソリューション

R&S®ZVA 4ポート・ベクトル・ネットワーク・アナライザは、内蔵信号源を2つ備えているので、1台の測定器で2つの周波数オフセットトーンを発生し、高速に掃引することができます。R&S®ZVA-K4周波数変換ソフトウェアオプションには、相互変調測定メニューがあり、周波数/パワー掃引測定のテストセットアップを効率的に設定できます。

2つのトーンは、R&S®BBA150広帯域アンプに印加されて、必要な高いパワーレベルを発生します。これらのアンプは、最高6 GHzの周波数と、15 W200 Wの出力パワーにより、PIM測定に最適です。

ZVAの自動レベル制御(ALC)設定メニュー
R&S®ZVAの自動レベル制御(ALC)設定メニュー
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安定した正確なテスト信号をDUTに供給するための基礎となるのが、R&S®ZVAの自動レベル制御(ALC)機能です。ALCは、ポート1と3の2つのトーンの信号源出力パワーを、対応するポートの基準レシーバーで測定されたパワーレベルを使用して、独立に正確に制御する機能です。これにより、短いALCセトリング時間内で、基準面(DUT)での出力パワーをきわめて高速に調整できます。ALCを使用することにより、熱/パワーセトリング時間の問題と、アンプの出力パワー変動の問題を解決できます。DUTを接続したらすぐに測定を開始できるので、掃引1回あたりのテスト時間を、数分から1秒未満(代表値)まで短縮できます。これにより、製造スループットを大幅に高めることができます。ほとんどの場合は、ALC機能のデフォルト値を使用すれば十分です。この場合、セトリング許容値は0.1 dBになります。必要に応じて、テスト要件をサポートするために、ALCパラメータを個別に設定することもできます。

最初のパワー校正の際に、内蔵信号源から発生されたパワーと、対応する基準レシーバーで測定されたパワーレベルが関連付けられ、必要なパワーが基準面に供給されます。例えば、基地局トランシーバーのデュプレックスフィルターのPIM測定では、このソリューションを使って、必要な最大+47 dBmのパワーレベルをDUTに供給できます。このアプリケーションカードに記述されているテストパラメータとコンポーネントを使用すれば、43.5 dBm(1 Hz IF)、約2 GHzで、最大-168 dBcという優れたダイナミックレンジが得られます。しかも、ダイレクト・レシーバー・アクセスを使用すれば、さらに10 dB の改善が可能です。

ZVAとBBA150アンプ2台からなるテストセットアップで、テスト時間の短縮と確度の向上を実現
R&S®ZVAとR&S®BBA150アンプ2台からなるテストセットアップで、テスト時間の短縮と確度の向上を実現。
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まとめ

PIMテスト性能は、基本的に、パワーアンプの(熱)セトリング時間に依存します。これはさらに、レベル確度、安定度、テスト時間にも影響します。4ポートのR&S®ZVA は、2つの内蔵信号源と自動レベル制御(ALC)を備え、R&S®BBA150広帯域アンプと組み合わせることにより、超高速、超高確度で再現性の高いPIM測定を実現する独自のソリューションとなります。

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