低ジッタの発振器とクロックを使用した、電源誘導ジッタとPSNRの測定

高速デジタルデザインでデータレートの向上を実現するためには、低ジッタの発振器やクロックのようなタイミングコンポーネントが必要になります。システムデザイン全体の一部として、コンポーネントは、理想的ではないパワーインテグリティー環境で動作して、パワーレール妨害波から発生する電源誘導位相雑音/ジッタを制限する必要もあります。電源ノイズ除去(PSNR)の測定には、人為的な正弦妨害波の正確な発生とレベル調整、発生した位相雑音やジッタ障害の測定が必要になります。

PSNRテスト:Epson SG3225EEN 低ジッタ水晶発振器での、電源誘導位相雑音/ジッタの測定。
PSNRテスト:Epson SG3225EEN 低ジッタ水晶発振器での、電源誘導位相雑音/ジッタの測定。

課題

最新の高速ネットワークシステムでは、低ジッタ(100 fs未満)の発振器とクロックが必要になります。このようなコンポーネントのジッタ値は、一般的に、12 kHz~20 MHzの積分範囲で仕様化されています。通常、測定は理想的なパワーレール条件で実行されます。クリーンなパワーレールで最高のジッタ値を実現できるとしても、デバイスは必要なジッタ性能を、システム全体のパワーレール妨害波が存在する中で実現しなければなりません。電源ライン周波数および、DC/DCコンバーターのスイッチング周波数の電源誘導ジッタ除去と高調波は、一般的に50 Hz~数MHzで測定します。テストのために、パワーレールのDC電圧に対して正弦波妨害波の発生と重畳を必要な振幅で行います。人為的なパワーレール妨害波の電圧レベル(dBm)と、発生した位相雑音ライン(dBm)の差が、その周波数ポイントでのPSNRに等しくなります。先に述べた周波数レンジ全体でPSNRを解析するために、測定は一般的に複数の周波数ポイントで実行されます。

ローデ・シュワルツの位相雑音アナライザは非常に優れた感度を備えているので、低ジッタデバイスの位相雑音とジッタを測定するために最適な測定器です。ファンクションジェネレーターが内蔵されたオシロスコープと専用のパワーレール・プローブを使用して、正弦妨害波の発生と、パワーレール上の妨害電圧測定を容易に実行することができます。

PSNRテストセットアップ
PSNRテストセットアップ
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ローデ・シュワルツのソリューション

発振器またはクロックのジッタおよびPSNRの測定には、一般的に以下が含まれます。

  • ベースライン測定
    パワーレール妨害波なしの状態で位相雑音/ジッタ測定を実行して、DUTのベースライン性能を理想的な条件下で特定します(一般的なジッタ積分範囲は、12 kHz~20 MHz)。
  • PSNR測定
    注入:正弦妨害波をさまざまな周波数ポイントで注入して、電源誘導位相雑音/ジッタを特定します(一般的なPSNR測定レンジは、50 Hz~5 MHz)。
    計算:PSNRは、注入周波数ごとに計算されます。発生した位相雑音スプリアス(dBm)とパワーレールに追加された妨害電圧(dBm)の差です。
156.25 MHz発振器のPSNR測定:この例では、3 kHzの注入周波数で開始しています。
156.25 MHz発振器のPSNR測定:この例では、3 kHzの注入周波数で開始しています。
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位相雑音測定

R&S®FSWP 位相雑音アナライザは、業界最高の位相雑音感度とジッタ感度を実現しています。R&S®FSWP-B60またはR&S®FSWP-B61オプションを追加すると、相互相関によってさらに感度が向上します。表示される相互相関利得インジケーターには、測定器の位相雑音寄与が示され、測定された位相雑音トレースに対するマージンが可視化されます。R&S®FSWPは、ユーザー定義の積分範囲内でDUTジッタを測定するように設定することができます。例に表示されているのは高速通信システムのタイミングコンポーネントの測定で、12 kHz~20 MHzの範囲の代表値です。位相雑音アナライザの高度なスプリアス解析により、パワーレールへの注入正弦妨害波から発生したスプリアスが描画されます。本測定器の最大値ホールドモードにより、注入された妨害周波数の最大値を必要な周波数レンジ全体で維持することができます。発生したスプリアスとオフセットのレベルおよびジッタ値も表示され、PSNRの結果を快適に解析することができます。

R&S®RTO2000 オシロスコープによるR&S®RT-ZPR20 パワーレール・プローブの自動検出。
R&S®RTO2000 オシロスコープによるR&S®RT-ZPR20 パワーレール・プローブの自動検出。
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正弦妨害の発生と測定

R&S®RTO2000 オシロスコープのR&S®RTO-B6オプションにより、ファンクションジェネレーターモード、変調モード、掃引/任意波形設定モードを備えた内蔵波形発生器が追加されます。例では、Picotest J2120A ラインインジェクターを使用して、3 kHz、10 kHz、30 kHz、100 kHz、300 kHzで発生する正弦波信号をDUTパワーレールに印加しています。レール上の実際の電圧は、R&S®RT-ZPR20 パワーレール・プローブで測定します。ファンクションジェネレーター出力を調整して、必要な10 mVrms(-27 dBm)の妨害波を各周波数ポイントで作成してパワーレールに印加します。R&S®RT-ZPR20には、パワーレールDC電圧を正確に測定できるR&S®ProbeMeterが内蔵されています。パワーレール・プローブはオフセット補正機能と低い固有ノイズ特性を備えているので、R&S®RTO2000 オシロスコープのフル分解能を使用すれば非常に小さな妨害波でも正確に測定することができます。

オプションのR&S®RTO-K17 高分解能モードにより、分解能が最大16ビットまで向上し、さらに測定確度が改善されます。

まとめ

R&S®FSWPとR&S®RTO2000にオプションR&S®RTO-B6 内蔵波形発生器を組み合わせれば、コンパクトなセットアップで、低ジッタの発振器およびクロックの電源誘導位相雑音/ジッタを測定することができます。R&S®RT-ZPR20 パワーレール・プローブとR&S®RTO-K17 高分解能モードを使用すれば、小さなパワーレール妨害波を非常に正確に測定することができます。PSNR値は、R&S®FSWPのスプリアスレベルと、パワーレール妨害波の電圧レベルを元に計算されます。

パワーレール注入妨害波を10 mVrmsにレベル調整します。20 dBアッテネータをR&S®RTP-B6 波形発生器の出力で使用して、さらに高い分解能を実現します。
パワーレール注入妨害波を10 mVrmsにレベル調整します。20 dBアッテネータをR&S®RTP-B6 波形発生器の出力で使用して、さらに高い分解能を実現します。
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