GNSSレシーバーを用いたハードウェア・イン・ザ・ループ・テストの簡素化

R&S®SMBV100Bのハードウェア・イン・ザ・ループ・オプションとR&S®SMW200A GNSSシミュレータにより、現実的でコストパフォーマンスの高い柔軟なテストがユーザー管理環境で可能になります。

ハードウェア・イン・ザ・ループ(HiL)テストセットアップ
図1:ハードウェア・イン・ザ・ループ(HiL)テストセットアップ

課題

自動車および航空宇宙/防衛アプリケーション用の新しい統合されたGNSSベースシステムを開発するのは、容易な作業ではありません。このようなシステムは、過酷な環境下でも高い信頼性を維持し正確に動作しなければなりません。そのため、徹底的なテストと検証が必要になります。残念ながら、このような複雑なシステムで、フィールドテストがオプションになることはまれです。実環境での試験は時間と高い費用がかかるだけでなく、安全性を考慮するためテストに制限が生じます。GNSSに依存する新しいアビオニクスシステム(飛行管理装置やオートパイロットシステムなど)の開発/テストでは、こうした問題を常に抱えています。飛行テストには高い費用がかかるだけでなく、実証されていない新しいシステムを空中でテストするのは、非常に危険です。このため、ラボ環境においてテストを実行することが望まれます。

ハードウェア・イン・ザ・ループ(HiL)テストシステムは、DUTの現実的な環境を実現します。これにより、リアルタイムにクローズドループでシステム全体の性能を評価できます。

図1に、オートパイロットシステムをテストするために使用できるHiLシステムを示します。HiLシミュレータがDUTの位置と方向を計算し、GNSSシミュレータが相当する衛星信号を出力します。すべてが、リアルタイムに制御されます。GNSSレシーバーが、オートパイロットシステム(DUT)に位置データを提供します。DUTは、このデータに基づいて飛行制御入力を計算します。次に、オートパイロットシステムの出力がHiLシミュレータで検証されます。

SMBV100Bが統合されたHiLテストセットアップ
R&S®SMBV100Bが統合されたHiLテストセットアップ

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®SMBV100BとR&S®SMW200A GNSSシミュレータは、GNSSリアルタイム・インタフェース・オプションを組み込むことができます。これにより、GNSS信号をDUTに供給するHiLテストシステムへの統合が容易になります。図2に、R&S®SMBV100Bを使用した、一般的なHiLテストセットアップを示します。

容易な統合を可能にする柔軟なインタフェース

テストセットアップで最大限の柔軟性を実現するには、リモートコマンドをLAN、USB、GPIBを介してストリーミングします。軌道データは、SCPIまたはUDPコマンドでGNSSシミュレータに転送されます。GNSSシミュレータは、リアルタイムに6自由度(DoF)軌道データを受信します。これには、レシーバー位置、速度、加速度、姿勢(ヨー、ピッチ、バンク)のデータが含まれます。位置の更新は、最大100 Hzという高速な更新速度で送信されます。低遅延(最小20 ms)のR&S®SMBV100Bと組み合わせることによって、システム全体で低遅延、高速処理、優れた信号確度を実現しています。
HiLシミュレーションでは、すべてのデバイスの正確な同期が必要です。ローデ・シュワルツのGNSSシミュレータは、HiLシミュレータとの信頼性の高い時間同期のために1 PPS(パルス/s)または10 PPSの信号を出力します。より便利な操作と最適化セットアップのために、GNSSシミュレータは包括的な統計とデバッグ機能を提供しています。

現実的な条件でのテスト

ローデ・シュワルツのGNSSシミュレータは、多数のGNSSチャネル(最大144チャネル)、マルチコンスタレーション/マルチ周波数セットアップをサポートしているので、非常に複雑なテストシナリオでも生成できます。シミュレートされた移動は、リアルタイムに連続調整されます。さらに、受信できる衛星とパワーレベルをオンザフライで変更でき、埋もれたり遮蔽されたりしたGNSS信号のモデリングなど、システムテストの可能性を広げます。

できるだけ現実的なシミュレーションを行うために、GNSSシミュレータは、アンテナの位置、方向、種類を考慮できます。アンテナの位置は、すべて6自由度(DoF)で設定できます。アンテナのマウント位置が原因で生じる信号の減衰やブロックを、ユーザーが提供するボディーマスク・ファイルと呼ばれるファイルで指定できます。さらに、特定のアンテナパターンを、使用されているアンテナと同じタイプのモデルにインポートできます。姿勢データがGNSSシミュレータに提供されている場合は、アンテナパターンとボディーマスクを使用して、実際のダイナミックシナリオで生じるのとまったく同様に、正確に各衛星の受信信号の変化を計算できます。

GNSSシミュレータGUI:リアルタイム軌道表示
GNSSシミュレータGUI:リアルタイム軌道表示

便利なユーザーインタフェース

ここで示す例では、R&S®SMBV100Bに対するリアルタイム軌道データ入力をデモするために、R&S®SMBV100Bとフライトシミュレータが接続されています。フライトシミュレータは、位置、キネマティック、姿勢の情報をGNSSシミュレータにリアルタイムで提供します。GNSSシミュレータは軌道に従って、対応するGNSS信号を計算します。以下に示す画像は、飛行機の軌道をGNSSシミュレータ上にリアルタイムで表示したものです。位置や速度などの重要なパラメータも表示されています。

姿勢情報は、姿勢指示器およびコンパス上で可視化できます。これにより、シミュレートされたパラメータのチェックを容易に行えます。これは、アンテナパターンを使用して特定の種類の受信アンテナをシミュレートする時に特に便利です。どちらの計測器でも、アンテナの現在の方向を瞬時に特定できます。

主な利点

  • リアルタイムのダイナミックな6自由度のレシーバー移動
  • 高速な更新速度(最大100 Hz)
  • 低遅延(最小20 ms)
  • 優れた信号/処理確度
  • 柔軟なインタフェースにより、テストセットアップへの統合が容易
GNSSシミュレータGUI:瞬時の姿勢指示
GNSSシミュレータGUI:瞬時の姿勢指示