IEEE 802.11beデバイスの無線性能の検証

Wi-Fi 7に対するRF性能。

次世代のWi-Fi規格

課題

最新のIEEE 802.11be仕様の草案に見られるように、次世代のWi-Fi規格の開発が本格化しており、具体的な実装に向け、物理層についてはすでに十分に定義されています。信号発生器とシグナル・アナライザは、Wi-Fi 7信号の世界を広め、この新しい規格に対応したコンポーネントやモジュールの初期テストを実行するのに必要です。

R&S®SMM100A ベクトル信号発生器とR&S®FSV3030 シグナル・スペクトラム・アナライザで構成される、IEEE 802.11beデバイステスト用の代表的なテストセットアップ。
R&S®SMM100A ベクトル信号発生器とR&S®FSV3030 シグナル・スペクトラム・アナライザで構成される、IEEE 802.11beデバイステスト用の代表的なテストセットアップ。
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次世代のWi-Fi 最新のIEEE 802.11ax Wi-Fi規格は、効率を高め、複数の接続されている機器が同時に動作する大規模な会場など、より幅広い使用状況に対応するように定義されています。技術基礎として、OFDMA、78.128 kHzのサブキャリア間隔、より長いガードインターバル、最高変調方式1024QAMの導入があります。

この新しい規格は、家庭、オフィス、工場におけるさまざまなアプリケーションで、高データスループット、低レイテンシーを実現することに重点を置いています。

2つの実践的な方法、特にユーザー密度の高い環境における、より高次の変調方式の適用と割り当てられた周波数スペクトラムのより柔軟な使用により、物理リンク層のデータスループットを高めることができます。

IEEE 802.11beでは、両方の方法を取り入れているだけでなく、より高次のMIMO方式も定めています。この新しい規格は、IEEE 802.11axをベースとし、その方法に一貫して準拠しています。例えば、6 GHzバンドにおける優れたスペクトラム可用性を活用するために、信号帯域幅が320 MHzまで拡大され、最大16のデータストリームのパラレル伝送に加えて、最大4096QAMの新しい変調方式を実現可能です。1人のユーザーにマルチリソースユニット(MRU)、つまり複数の周波数ブロックを割り当てることにより、1つのスペクトラムや、データを大量に消費するクライアントに合わせてカスタマイズされたアクセスポイント接続を、より効率的に使用することができます。

この新しい規格では、データスループット、レイテンシー、信頼性を高めるために複数の物理リンクを結合するマルチリンクオペレーション(MLO)が導入されます。

これらの機能拡張の集結により、特にIEEE規格のIEEE 802.11beに定義されているExtremely High Throughput(EHT:極めて高いスループット)が実現します。

IEEE 802.11beでは、長期にわたるアプリケーション/下位互換性を確保するための新しいプリアンブルを持つ、2つの新しい物理層プロトコルデータユニットを定義しています。データ制御用のEHT固有のフィールドに加えて、各プリアンブルには、以前のIEEE 802.11規格との下位互換性用のレガシーフィールドがいくつか含まれます。

機器は、新しいPPDUフォーマットを処理し、より要求の厳しい物理的要件を満たすことができなければなりません。

Wi-Fi 5
IEEE 802.11ac
Very High Throughput(VHT)
Wi-Fi 6/6E
IEEE 802.11ax
High Efficiency(HE)
Wi-Fi 7
IEEE 802.11be
Extremely High Throughput(EHT)
サポートされるバンド 5 GHz 2 GHz、5 GHz、6 GHz 2 GHz、5 GHz、6 GHz
チャネル帯域幅 20 MHz、40 MHz、80 MHz、
80 MHz + 80 MHz、160 MHz
20 MHz、40 MHz、80 MHz、
80 MHz + 80 MHz、160 MHz
20 MHz、40 MHz、80 MHz、
160 MHz、320 MHz
伝送方式 OFDM OFDM、OFDMA OFDM、OFDMA
サブキャリア間隔 312.5 kHz 78.125 kHz 78.125 kHz
ガードインターバル 0.4 μs、0.8 μs 0.8 μs、1.6 μs、3.2 μs 0.8 μs、1.6 μs、3.2 μs
空間ストリーム 8×8(DL-MU-MIMOを含む) 8×8(MU-MIMOを含む) 16×16(MU-MIMOを含む)
変調(最高) 256QAM(8ビット) 1024QAM(10ビット) 4096QAM(12ビット)
R&S®SMW200A ベクトル信号発生器
R&S®SMW200A ベクトル信号発生器
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IEEE 802.11be信号の作成

IEEE 802.11be信号発生ソリューションは、次の2つの条件に適合している必要があります。1つは、すべてのEHT伝送モードについて320 MHzの信号帯域幅をサポートしていること、もう1つは6 GHzバンド(5.925 GHz~7.125 GHz)における4096QAM信号発生機能をサポートしていることです。パワーアンプやレシーバーのテストでは、信号発生器は、-50 dB未満のEVM性能を備えている必要があります。ハイエンドのR&S®SMW200AとミッドレンジのR&S®SMM100A ベクトル信号発生器は、これらの要件に適合しています。

これには、次の2つのオプションが必要です。1つは、R&S®Sxx-K54 Wi-Fiベースオプション(IEEE 802.11a/b/g/n/j/pに準拠した信号を発生可能)、もう1つはR&S®Sxx-K147追加オプション(IEEE 802.11be用の新機能を含む)です。

R&S®Sxx-K54オプションによるWi-Fi設定
R&S®Sxx-K54オプションによるWi-Fi設定
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迅速かつ容易なPPDU設定

IEEE 802.11be信号の設定をわずか数ステップで実行できます。まず、フレーム・ブロック・シーケンサーで伝送モードを選択してから、PPDUを設定します。

プロトコルフィールド(PPDU)の設定
プロトコルフィールド(PPDU)の設定
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上述のように、IEEE 802.11beでは、レガシートレーニングフィールドやレガシーシグナリングフィールドに加えて、IEEE 802.11be固有のU-SIGフィールドとEHT-SIGフィールドを含む新しいPPDUフォーマット(EHT MUとEHT TRIG)が導入されています。PHYバージョン識別子を含む一部のシグナリングデータがあらかじめ設定されています。その他のパラメータ(リンク方向、PPDUタイプ、BSSカラー、STA-ID、MCSタイプ、チャネルコーディングなど)は、PPDU設定ダイアログで直接かつ明確に選択できます。

320 MHzチャネルのMRU設定
320 MHzチャネルのMRU設定
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リソースユニット割り当ておよびパンクチャリングするチャネルのメニュー方式の設定は、EHT-SIGとU-SIGに間接的に適用されます。IEEE 802.11beオプションでは、マルチリソースユニット(MRU)を個々のユーザーに割り当てることができます。

リソースユニットには、242、484、または996のサブキャリアを含めることができ、これによりユーザーに割り当てることができるチャネル数が決まります。MRUインデックスは、チャネル内でのリソースユニットの位置を定義します。

気象レーダーなどの特権アプリケーションが占有する信号帯域幅内の特定の周波数レンジは自動的に除外され、伝送には使用されません。規格(1列目)を選択したら、設定メニューを使用してさらに設定することができます。

R&S®FSW ハイエンド・シグナル・スペクトラム・アナライザ
R&S®FSW ハイエンド・シグナル・スペクトラム・アナライザ
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空間マッピング

データスループットを高めるために、IEEE 802.11beでは、最大8台の同時接続端末用に、SU-MIMO(16×16)とMU-MIMOの両方で最大16のパラレルデータストリーム、各ユーザー用に最大4つのデータストリームを指定しています。R&S®SMW200AとR&S®SMM100Aは、オンボードリソースを使用してすべてのデータストリームを計算します。そのうちの2つを、R&S®SMW200A RFインタフェース経由で同時に出力できます。

IEEE 802.11be信号の解析

R&S®FSx-K91BE測定オプションは、IEEE 802.11be機能を、ハイエンドのR&S®FSWとミッドエンドのR&S®FSV3000 シグナル・スペクトラム・アナライザ用の既存のIEEE 802.11a/b/g/n/p/ac/ad/ax/ay測定オプションに追加します。

手動でのリソースユニット割り当ておよびユーザー固有のインデックス用のメニュー
手動でのリソースユニット割り当ておよびユーザー固有のインデックス用のメニュー
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解析を設定するための2つの方法

1つは、PPDUフォーマットの設定メニューを使用して、規格に完全に準拠していない信号を定義します。標準化の初期段階では有意義です。

より便利な方法では、自動復調と自動検出により、EHTロング・トレーニング・フィールド(EHT LTF)の長さやガードインターバルなどのパラメータを設定します。自動検出モードでは、アナライザが適用されるIEEE 802.11be信号用に自動的に設定され、パラメータがリストされます。リソースユニット割り当て、変調/コード化方式(MCS)、およびその他のユーザー固有の値も、新しいU-SIG(ユニバーサルSIG)およびEHT-SIG信号フィールドに定義できます。

IEEE 802.11be信号自動検出によるパラメータリスト
IEEE 802.11be信号自動検出によるパラメータリスト
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新しい4096QAM変調/コード化方式と、最大320 MHzの信号帯域幅により、信号品質に対する要求が以前よりも大きくなっています。IEEE 802.11beでは、マルチユーザーPPDU(EHT MU PPDU)とトリガベースのPPDU(EHT TB PPDU)の両方で、-38 dBの最大EVMが必要です。アナライザには通常、少なくとも-48 dBまでのEVMを10 dBの安全マージンで測定する能力が求められます。R&S®FSW-B320 320 MHz解析帯域幅オプションを搭載すれば、R&S®FSWでこれを実現できます。

IEEE 802.11be信号の解析
IEEE 802.11be信号の解析
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