R&S®SMB100Aを使用した気象レーダー受信機の校正

R&S®SMB100Aアナログ信号発生器は、出力レベルの精度が非常に高いため、気象レーダー受信機の校正信号源として最適です。

反射率の特定
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課題

気象予報士は、主に個別の雲や雲系の動的構造を解析したり、降水量を継続的に測定したりする目的で気象レーダー装置を利用しています。正確な気象予報を行う上で重要になるのは、気象レーダーで測定された降水強度や降雨率です。

レーダー装置では降水強度を直接測定することはできませんが、反射率を測定することができます。反射率はターゲットの後方散乱断面積に対応する単位で、アンテナに対するレーダービームですべての散乱粒子から後方散乱されるエネルギーに比例します。空気中の雨粒の数が増え、粒の大きさが大きくなるほど、反射率も大きくなります。

反射率の定量化は、基本的に信号源であるレーダー送信機と選択的なパワーメータである受信機による2ポート測定です。送信機から受信機へのパスの透過係数は、既知の送信パワー(Pt)と測定された受信パワー(Pr)から計算できます。この透過係数には、ターゲットの反射率、アンテナの利得、アンテナからレーダーターゲットへのパスの減衰率が含まれています。アンテナの利得と透過損失はわかっているので、反射率を計算することができます。

レーダー送信機では、通常、反射率を求めるための十分な精度を備えた出力パワーを発生します。受信機では、これが難しくなります。一般に、受信機では高い精度でレベル変化をモニタリングすることは可能ですが、特性上、絶対レベルを測定するのに十分な精度はありません。

この測定を行うのに必要な精度を実現するには、出力レベルの精度が非常に高い信号源を使用し、これらの受信機を定期的に校正する必要があります。降水確率や雨、雪、霧の密度を正確に求めるには、校正済みの気象レーダー装置が不可欠です。

電子計測ソリューション

R&S®SMB100Aアナログ信号発生器では、気象レーダー受信機の校正に必要な非常に精度の高い出力レベルが利用できます。

校正を行う場合は、気象レーダーの受信ラインに方向性結合器(16 dBの結合器)を使用してR&S®SMB100Aを挿入します。

インピーダンスマッチングを向上させるために、方向性結合器の結合ポートとR&S®SMB100Aとの間に3 dBのアッテネータを挿入します。R&S®SMB100Aのレベルを設定する際に減衰量を考慮できるように、R&S®SMB100Aの出力からレーダー受信機の入力までの全減衰量を把握する必要があります。この減衰量は設置時に正確に測定され、ほぼ20 dBです。これは、方向性結合器、アッテネータ、ケーブルの伝送損失によるものです。したがって、ほとんどのレーダー受信機に最適な-10 dBm~-110 dBmのレンジをカバーするには、R&S®SMB100Aのレベルを+10 dBm~-90 dBmで変化させます。

受信機の校正中は、レーダー送信機をオフにし、R&S®SMB100Aで必要な周波数とレベルで校正信号を作成します。受信機で測定した信号レベルを読み取り、校正レベルと比較して、修正値を計算します。これらの受信機は、一般に良好な相対レベル確度を示します。このため、ハイレベル(-10 dBmなど)とローレベル(-70 dBmなど)での受信機の修正値を計算して保存する2ポイント校正を行うのに十分です。

必要に応じて、3つ以上の校正ポイントを使用することもできます。R&S®SMB100Aでは、受信機の感度下限値(-110 dBmなど)にまで対応できます。校正が済んだら、R&S®SMB100Aをオフにして、レーダー装置を通常の業務で使用することができます。校正間隔は受信機の安定度に左右されますが、通常は月に1回です。

R&S®SMB100Aは、必要な出力レベルに対して、<0.1 dBの測定レベル確度(5.62 GHzおよび室温時)を提供します。さらに、12.75 GHzの最大出力周波数に対応しているため、Xバンド周波数までの校正が可能です。このように、R&S®SMB100Aは、気象レーダー受信機の絶対レベル測定を校正するのに最適な精度の高い信号源になります。

さらに高い性能要件が求められる場合は、優れた信号純度を実現するハイエンドのアナログ信号発生器であるR&S®SMA100Aを使用できます。

気象レーダー受信機を校正するための一般的な構成
気象レーダー受信機を校正するための一般的な構成