R&S®ZVA-K9によるLOアクセスなしでの群遅延の測定

R&S®ZVA-K9オプションを搭載したR&S®ZVAベクトル・ネットワーク・アナライザにより、校正ミキサーを使用することなく、エンベディッドLOを含むデバイスで絶対群遅延を測定可能

課題

特にマイクロ波レンジでは、ミキサーは多くの受信機/送信機の基本的なコンポーネントの1つです。ミキサーを利用した受信システムや送信システムでは、ミキサーの振幅応答、群遅延応答、位相応答が十分に制御されている必要があります。特に位相の線形性と群遅延が一定であることは、無線および衛星通信システムのデータ伝送時のビットエラー率(BER)を低く抑え、監視システムのフェーズド・アレイ・アンテナ・モジュールで高いターゲット分解能を得るために不可欠です。

主に測定するのは、周波数コンバーターの相対群遅延または絶対群遅延です。局部発振器にアクセスできる場合は、基準ミキサー手法を用いて群遅延と相対位相を測定できます。集積化や小型化が進んでいるため、多くの場合、局部発振器(LO)や共通基準周波数信号のいずれにもアクセスできません。

ZVAのデジタルフロントエンド
R&S®ZVAのデジタルフロントエンド:異なる複数の周波数で信号の位相差を測定するためのR&S®ZVAのデジタルフロントエンド
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電子計測ソリューション

ローデ・シュワルツは、このようなアプリケーションに対処するための革新的な手法を開発しました。2トーン入力信号を使用することにより、R&S®ZVAベクトル・ネットワーク・アナライザで2つの信号間(被試験デバイス(DUT)の入力と出力の両方)の位相差を測定することができます。一般的なSパラメータ手法と同様に、位相差と周波数オフセットから群遅延を計算します。2つの信号間の周波数オフセットΔfはアパーチャです。異なる複数の周波数を使用して2つの信号間の位相を測定するために、ローデ・シュワルツはR&S®ZVA内に独自のフロントエンドを開発しました。

各受信機(axまたはbx)からADCに信号が渡されると、信号はデジタルミキサーステージでデジタル局部発振器(NCO 1/2)によってDCにダウンコンバートされ、その後デジタルフィルタで処理されます。各受信機には2つのNCOを含む2つの独立したデジタル処理経路が存在し、2トーン入力信号の2つのRF信号に同じオフセットが発生します。受信機の各フロントエンドで、2つの搬送波の位相関係を求めることができ、その後群遅延の計算に使用できます。搬送波の位相差を計算する際にDUT内部のLOの周波数や位相のずれが相殺されるため、この方法はLOが未知または不安定な周波数変換DUTに最適です。

群遅延に加えて、R&S®ZVAでは、群遅延を積分して相対位相と線形位相からのずれが計算され、群遅延を微分して群遅延の微分係数が計算されます。

セットアップと校正

R&S®ZVA-K9エンベディッドLOミキサー遅延測定オプションは、4ポートのR&S®ZVAを使用して容易にセットアップできます。Port 3の内部カップラーを結合器として使用して、2トーン信号をPort 1から直接取り出します。測定全体の校正は、Port 1とPort 2の間の既知のスルー接続を使用し、標準的なSパラメータと同じ方法でケーブルをノーマライズすることにより容易に行うことができます。このため、既知の校正ミキサーは必要ありません。

まとめ

多くの場合、LOにアクセスできない周波数変換デバイスで群遅延や相対位相の測定が可能なのは、DUTに安定度の高い内蔵LOが含まれている場合に限られていました。ドリフト、位相雑音、周波数変調による位相や周波数のずれにより、使用可能な方法の精度は大きく制限されていました。ローデ・シュワルツの2トーン手法は、これらの制約をすべて解消します。校正が大幅に容易になり、必要なものがスルー接続のみになったので、こうした重要な測定のセットアップが大幅に簡素化されます。

測定/校正セットアップの設定
測定/校正セットアップの設定:R&S®ZVA-K9エンベディッドLOミキサー遅延測定オプションを搭載したR&S®ZVAにより、ミキサーおよび周波数コンバーターで絶対群遅延の測定が可能になります。これは、エンベディッドLOの位相または周波数の不安定さの影響を受けません。
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