110 GHzを超える雑音指数の測定

ローデ・シュワルツのシグナル・スペクトラム・アナライザ(R&S®FSx-K30 オプションを搭載)は、Yファクタ法でミリ波周波数レンジの雑音指数を正確に測定するためのソリューションの基礎となります。

課題

最近の半導体技術の向上に伴い、特にミリ波レーダーとイメージングアプリケーションにおいて、110 GHzを超えるマイクロ波周波数レンジの魅力がますます高まっています。しかし、通常は周波数レンジが高くなるほど受信機のS/N比が悪くなります。このため、ミリ波アプリケーションの開発では、感度を高めるためにLNA(ローノイズアンプ)または受信経路全体の雑音指数の測定が非常に重要です。

LNAの雑音指数とゲインによって、実現可能な全体のS/N比が決まります。システムを適切に設計してレーダーおよびマイクロ波イメージングアプリケーションの解像度を向上させたり、通信アプリケーションでデータスループットを向上させたりするには、これら両方のパラメータを測定する必要があります。

電子計測ソリューション

ローデ・シュワルツのシグナル・スペクトラム・アナライザ(R&S®FSx-K30 雑音指数測定オプションが搭載されたR&S®FSWなど)は、雑音指数とゲインをミリ波レンジでも正確に測定し分析できる理想的なソリューションです。R&S®FS‑Z170などの外部ハーモニックミキサを使用して、アナライザの周波数レンジを170 GHzまで拡張できます。

通常、雑音指数とゲインはYファクタ法を使用して測定します。この測定法では、ELVA社の周波数レンジ110 GHz170 GHzのノイズダイオード(モデルISSN-06)などのノイズソースを利用して、被試験デバイスに過剰雑音比(ENR)を与えます。アナライザの感度を上げ、再現性と信頼性の高い結果が得られるようにするため、RPG D-LNA 110-170などのローノイズ・プリアンプをミキサーの前に追加することを推奨します(RPGはローデ・シュワルツ・グループです)。

110 GHzを超える雑音指数の測定
プリアンプ(緑)を使用した場合、プリアンプを使用しない場合(黄)に比べて、中心周波数140 GHzで実現可能なYファクタが10倍まで上がります。
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R&S®FSx-K30によって、テストセットアップを完全に制御できます。測定掃引中にノイズソースのENRのオン/オフを切り替え、雑音指数とゲインの計算結果をさまざまなグラフと表で表示します。ノイズダイオードのオン/オフによるノイズフロア間の差がYファクタです。プリアンプを使用しない場合、140 GHzで実現可能なYファクタはわずか0.5 dBほどです。プリアンプを使用すると、Yファクタは10倍以上の約7 dBまで上がります。これは測定精度に大きく影響します。

ミリ波周波数での優れた性能

R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザはミリ波周波数でも優れた性能を発揮します。プリアンプはYファクタを十分上げ、わずか0.1 dB0.1 dBのレンジでアナライザの雑音指数とゲインの小さな統計誤差を補正します。これにより、110 GHzを超えても再現可能な測定を実行することができます。

テストセットアップのVSWRによって、テスト結果に計算が必要なシステマティック誤差が追加されます。R&S®FSx-K30 オプションには、雑音指数とゲインの測定のための不確かさ計算機能がすでに組み込まれています。使用コンポーネントのVSWR、ENR不確かさ、ゲインの代表値を入力できます。これにより、記載されたセットアップでは計算されるシステマティック誤差が約0.5 dBになります。システマティック誤差を減らすために、アッテネータやフィルターの追加が必要な場合があります。

まとめ

ローデ・シュワルツのシグナル・スペクトラム・アナライザ(R&S®FSx-K30 オプションを搭載)は、Yファクタ法でミリ波レンジの雑音指数を正確に測定するためのソリューションの基礎となります。内蔵されている不確かさ計算機能は、VSWR、ENR不確かさ、追加のアッテネータおよびフィルターなどのセットアップパラメータを誤差計算においてすべて考慮する強力なツールです。

アナライザの影響を取り除くための第2段階の補正の後、DUTをゲイン0 dBおよび雑音指数0 dBのスルー接続に置き換えることで、R&S®FSWの雑音指数およびゲインの系統的誤差が0.1 dBの小ささであることを検証します。

Yファクタ法に基づく雑音指数測定のための代表的なセットアップ:外部高調波ミキサー、ローノイズ・プリアンプ、ノイズソースを備えたテストセットアップで、R&S®FSx-K30オプション搭載のR&S®FSWを使用すれば、110 GHzを超えるエラー計算など、雑音指数および利得の正確な測定が可能です。