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人工知能 – イノベーションの宇宙を構成する要素

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Updated on 4月 04, 2024 🛈
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人工知能(AI)の利用が急速に広まったのは、ChatGPTの公開がきっかけです。この生成AIツールは、2022年11月の公式リリースから1週間で、100万回のアクセスを集めたと報じられています。それからわずか3か月後に、ChatGPTの運営企業であるOpenAIは、アクティブユーザー数が1億人に達したと発表しました。

現在のAIへの大きな関心は、単に新しもの好きの人々や技術オタクの間だけで起きているわけではありません。政府機関や企業も積極的に関与しているのです。例えば、政府が法的枠組みの検討を始める一方で、企業はAIスタートアップに投資したり、このテクノロジーを自社のビジネスに活かす方法を探したりしています。

Dr. Andrew Schaefer:ローデ・シュワルツ、テクノロジーコーディネーター(AI)
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AIと機械学習には大きな可能性があります。これらは驚くべき新機能や新しいビジネスチャンスをもたらすので、理解して使いこなす必要があります。

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Dr. Andrew Schaefer:ローデ・シュワルツ、テクノロジーコーディネーター(AI)

当社AIインキュベーションラボでのイノベーションの力

ドイツでは、企業の8社に1社がすでに人工知能を利用し始めています。「AIと機械学習には大きな可能性があります」と、ローデ・シュワルツのテクノロジーコーディネーター(AI)であるDr. Andrew Schaeferは述べています。Dr. Schaeferは、テクノロジーインキュベーション部門で、数年前に設立されたAIインキュベーションラボを率いています。「AIは驚くべき新機能や新しいビジネスチャンスをもたらすので、理解して使いこなす必要があります。当社のイノベーション精神を活かすことで、パートナーやお客様にとって最適な付加価値を生み出せると考えています」。

ローデ・シュワルツは、ドイツで最も革新的な企業の1つに数えられています。このラボは、グループ全体のイノベーションに重要な貢献をしています。Dr. Schaeferは次のように述べます。「私たちは、当社のさまざまな部門のプロジェクトに関わっています。そのために、全体像を容易に把握できます。同時に、他の部門のAI専門家とも積極的に対話し続けています。この密接な協力関係と、十分な量の専門知識のおかげで、ローデ・シュワルツではきわめて効果的な触媒効果が生じています」。

Andreas Hägele:ローデ・シュワルツ、マイクロ波イメージング担当バイスプレジデント
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当社のセキュリティースキャナーでは、異常検出のために人工知能が使われています。このイメージング手法は、人体に属しない物体や品物を検出するように設計されています。

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Andreas Hägele:ローデ・シュワルツ、マイクロ波イメージング担当バイスプレジデント

AIによるセキュリティーの向上

AIは、ローデ・シュワルツのさまざまな製品やソリューションにすでに用いられています。同社の広範囲のポートフォリオの中から代表的な例を挙げれば、R&S QPS クイック・パーソナル・セキュリティースキャナーがあります。この製品は、世界数百か所の空港で、セキュリティーチェックを高速かつ簡単な手順で行うために役立っています。

「当社のセキュリティースキャナーでは、異常検出のために人工知能が使われています」と、ローデ・シュワルツのマイクロ波イメージング担当バイスプレジデントであるAndreas Hägeleは述べています。「このイメージング手法は、人体に属しない物体や品物を検出するように設計されています」。このスキャナーは、ミリ波を使って瞬時に人体をチェックします。「反射されたミリ波は人工ニューラルネットワークによって数ミリ秒以内に自動的に評価され、疑わしい物体の存在が判定されます」とHägeleは語ります。このプロセスでスキャナーが処理するデータポイントの数は、約20億に上ります。ミリ波スキャンの開始から結果が得られるまでの時間はわずか数秒です。

Hägeleによれば、人間の目に見えない異常ですら検出可能です。「もはや『超人間的学習』の領域に入ったのです。つまり、AIを利用した当社のスキャナーの検出精度は、人間の目をはるかに超えているということです。当社のテクノロジーを使えば、人間の目が見たことがない物体ですら検出できます。このような超高度に進化したテクノロジーは、実際に命を救う可能性があります。その上、AIによる異常検出はまだまだ発展の可能性があるのです」。

人工知能が異常検出をサポートします。ローデ・シュワルツは、セキュリティースキャナーのテクノロジーを通じて、世界をより安全にするために貢献しています。

モバイル通信 - 基盤、触媒、先駆者

6Gの研究はもう始まっています。これも人工知能にとっての追い風となります。AIを利用すればデータをより効率的に伝送できるからです。6Gの目的は、単純に言うと、データレートのさらなる高速化と遅延の短縮を、いつどこでも実現することです。この進歩は、エクステンデッドリアリティー(XR)、自動運転、スマートファクトリーといったアプリケーションで重要な役割を果たします。さらに、AIベースのアプリケーションとサービスを巡って、まったく新しいアプリケーション分野が生まれる可能性があります。

モバイル通信は、AIアプリケーションの先駆者であり、触媒であるだけでなく、基盤としての役割も果たします。近い将来、6GでAIが大規模に展開されるとすれば、それは過去の世代のモバイルテクノロジーで得られた経験が開発プロセスで活かされるからでもあります。モバイル通信業界の長年のパートナーであるローデ・シュワルツは、欧州、アジア、米国での6G研究を積極的にサポートしています。さらに当社は、長年にわたり、さまざまな研究開発プロジェクトや業界団体に参加しています。全世界の主要な研究機関や大学との密接な協力関係は、当社の戦略の重要な要素です。電子計測に関するローデ・シュワルツの専門知識とソリューションは、次世代のモバイル通信への道を開くために貢献しています。

ローデ・シュワルツの最先端のテクノロジーは、どんな場所でも接続を維持するために役立ちます。

ニューラルテクノロジーの次の進化を共同で推進

6Gの商用化は2030年からの予定です。研究は順調に進んでいます。これに関して、ローデ・シュワルツとNVIDIAは、モバイル通信へのAIの応用に関する初期の成果をすでに公表しています。これはニューラルレシーバーと呼ばれる技術に基づいており、物理層のデジタル信号処理に従来の信号処理ブロックを使用しません。その代わりに使用されるのは、トレーニングされた機械学習モデルです。これはモバイル通信における重要な進展です。

このニューラルレシーバーには、NVIDIAのSionnaTMオープンソースライブラリが利用されています。このライブラリは、5Gおよび6Gの研究用に作成されたものです。この共同プロジェクトでは、ローデ・シュワルツのハイエンドの信号発生/解析用テストソリューションが、ニューラルレシーバーの性能のテストとシミュレーション結果の確認に用いられています。

モバイル通信での信号処理作業の例

モバイル通信は常に干渉にさらされています。そこで重要な作業の1つとして、チャネル予測とイコライゼーションがあります。現在のモバイル通信テクノロジーでは、デジタル信号処理が使用されます。トレーニングベースの予測方法では、実際のデータストリームの他に、追加のトレーニングシンボルが供給されます。到着したトレーニングデータに歪みがあるとレシーバーが判定した場合、デジタルフィルターによるイコライゼーションが行われます。トレーニングデータに見つかった歪みの程度に応じて、最適なフィルターパラメータが信号処理アルゴリズムによって計算されます。

これにより、モバイル通信で発生するさまざまな条件に対処できます。モバイル通信中の干渉は、例えば、ユーザーが自転車で森の中を走っているのか、混雑した歩道を歩いているのか、列車で移動しているのかによって異なります。

モバイル通信用ニューラルレシーバー

現在の5G New Radio(NR)規格で定義され、最新のスマートフォンや基地局で用いられているデジタル信号処理のためのソフトウェアアルゴリズムは、きわめて強力で効率的です。デジタル信号処理の一部をニューラルレシーバーで行うことで、データスループットと接続品質をさらに高められる可能性があります。現時点でのシミュレーション結果は、この結論を支持しています。この方法は、NVIDIAとローデ・シュワルツの共同プロジェクトの研究者たちが現在追求しているもので、2023年春にバルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレスで発表されました。

Andreas Rößler:ローデ・シュワルツ、6Gテクノロジーマネージャー
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初期の成果から、われわれのAIベースレシーバーは、従来のアルゴリズムの拡張よりも効率的であることが示されました。

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Andreas Rößler:ローデ・シュワルツ、6Gテクノロジーマネージャー

トレーニングデータの重要性

未来の6G規格では人工知能が信号処理に用いられるようになるという点で、全世界の学界、主要な研究機関、業界の専門家たちの予想は一致しています。ローデ・シュワルツの6GテクノロジーマネージャーであるAndreas Rößlerはこう述べています。「原則として、6Gの目的の1つは、従来の処理アルゴリズムをニューラルレシーバーによって置き換えること、あるいは少なくとも補完することです」。これにより、チャネル予測とイコライゼーションの精度が向上します。

「今日のアルゴリズムは、定義済みのチャネルモデルに基づいていますが、これは現実のある一瞬のスナップショットを表すものに過ぎません。実環境の伝搬条件をよりよく反映したデータセットで新しいニューラルレシーバーをトレーニングできれば、時間が経つにつれて従来のアルゴリズムに比べて大幅な改善を実現できるはずです」。

Rößlerによると、期待される性能向上にはある種のコストが伴います。AI技術にはより多くの計算能力が必要なのです。ただし、現在までの知見に基づけば、全体として利点が欠点を上回ると予想されます。「初期の成果から、われわれのAIベースレシーバーは、従来のアルゴリズムの拡張よりも効率的であることが示されました。目標は、システム全体の局所的な変更を可能にすることで、結果をさらに段階的に最適化できるようにすることです」。

人工知能 - 魅力的な可能性の万華鏡。
人工知能 - 魅力的な可能性の万華鏡。

将来の見通し

世界は変革に直面しており、人工知能は前例のない変化の触媒の役割を果たすはずです。AIは現在すでにさまざまな分野で用いられています。将来を見通せば、人類が未知の規模の新しい産業革命の入口に立っているという結論が容易に得られます。それは、現時点では予測不可能な結果と課題をもたらすでしょう。90年以上にわたり、イノベーションはローデ・シュワルツのDNAに組み込まれてきました。当社はこれからも、アイデアを現実に変え、AI、モバイル通信、センサーテクノロジー、計算能力の分野の進歩をシームレスに推進して統合することにより、より安全でつながり合った世界の実現を目指します。

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