パルス幅変調信号の解析
ローデ・シュワルツのオシロスコープ
ローデ・シュワルツのオシロスコープ
パルス幅変調(PWM)は、スイッチングモード電源を固定周波数で効率的にドライブするための一般的な方法です。この技法は、産業用制御システム、パワーエレクトロニクス、デジタル通信分野のさまざまな種類の電源に用いられます。このため、PWMはD/Aコンバーターをデザインする際に特に広く用いられる技法です。例えば、クラスDオーディオアンプ、DC/DC電源/インバーター、DCモーターの可変周波数ドライブ(VFD)、3相モータードライブなどです。特に、ブリッジやマルチフェーズ・モーター・ドライブの差信号は、バイポーラー・ダブル・パルス特性を示し、開発とテストに携わるエンジニアにとって課題となっています。
PWM信号の概要を短時間で簡単に知る方法としては、オシロスコープの残光表示機能があります。残光表示を使用することで、信号内にどのような種類のパルス幅が存在するかを大まかに把握することができます。さらに、カラー階調によって、波形のアクティビティが最も多い場所がわかります。
ただし、残光表示とカラー階調からは、解析情報は得られません。幅だけでなく周期も変調されているのか?変調サイクルはどれだけの頻度で繰り返されているか?それぞれの値の幅は何回発生しているか?こういった情報は、電源、プロセッサの電源電圧、バッテリー充電器に用いられる降圧コンバーターなどのさまざまな電子モジュールの開発に不可欠です。
こういった情報を得るには、もっと情報量の多い解析方法を使用する必要があります。
R&S®RTM3000およびR&S®RTA4000 オシロスコープのトラッキング機能を使用すると、PWM信号を復調し、元の変調信号をトラッキング波形の形で取り出すことができます。トラッキング波形は、収集時に記録された時間的順序の測定値から構成されます。この解析ツールでは、結果を任意の値対時間の形でプロットすることで、比較的長時間の測定中にPWMパラメータがどのように変化するかを明確に観察できます。これにより、PWMレギュレーター/コントローラーのトラッキングの精度とリニアリティーを評価できます。
R&S®RTM3000およびR&S®RTA4000のトラッキング機能の演算に組み込まれた標準を使用すると、復調信号の上限(ユニポーラー)および下限(バイポーラー)のしきい値を定義できます。
演算には、以下のトラッキング解析が標準として含まれます。
正確なPWM測定には、正しいプローブ接続が必要です。ほとんどのオシロスコープには、通常10:1のパッシブプローブが付属しています。これらのプローブではあいまいさが生じ、意味のあるグランド基準ポイントを発見できないことがあります。例えば、グランドに接続されていない2つの信号の間の差を測定する場合です。このような測定には、R&S®RT-ZD10などの差動プローブの使用が推奨されます。アプリケーションと環境によっては、電圧が大幅に変動し、kVレンジにまで達することがあります。R&S®RT-ZHD プローブは、最高6 kVの電圧に対応するように設計されているため、このような環境に最適です。
本機のセットアップ
オシロスコープを被試験回路に接続したら、オシロスコープのアプリケーションダイアログを使用して、トラッキングタブにアクセスします。ここにはさまざまな復調タイプが含まれています。
測定結果
演算メニューのトラッキング機能を使用すると、PWM信号を復調できます。また、波形を演算トレースとして表示できます。これにより、最大5つのトラッキング曲線を同時に表示できます。
抽出したトラッキング波形に基づいて、さらに解析を実行できます。R&S®RTM3000およびR&S®RTA4000のトラッキング機能では、各カーソルセットをトラッキング波形上に配置して、使用可能なすべての演算オプションを適用できます。また、RMSや周波数(回転周波数に関する情報を取得)など、使用可能なすべての測定をトラッキング波形に対して実行し、各測定の統計的評価を表示できます。
測定および解析ステップを実行した後、例えば、変調サイクルが何回繰り返されるか、あるいはそれぞれの値の幅が何回発生するかといった詳細情報を取得できます。そのような情報を利用して、制御アルゴリズムのエラーを発見したり、コントローラーの動作を調べたり、起動/シャットダウン時の動作を観察したりできます。これにより、PWM信号で実際に何が起きているかを詳細に把握できます。
レポートを作成する場合には、スクリーンショット、波形、統計、またはセットアップ全体を、容易にUSBデバイスに保存したり、LAN経由でPCに転送したりできます。
R&S®RTM3000およびR&S®RTA4000 オシロスコープのトラッキング機能は、PWM信号の時間変動を観察するのに最適であり、さまざまなアプリケーションに利用できます。
この機能により、PWM信号の各信号サイクルに関する詳細情報を取得して、予期しない異常を発見することができます。その他の測定機能、10ビットのADC、大容量メモリ、セグメントメモリとの組み合わせにより、R&S®RTM3000およびR&S®RTA4000は、コストパフォーマンスが高く、時間節約に役立つソリューションを実現します。どちらの測定器も、D/Aコンバーター、DC/DC電源、インバーターのデザイン(DCモーターおよび3相モータードライブのVFDなど)に柔軟性をもたらします。