Cバンドでの5Gと衛星サービスの共存

米国と欧州では、Cバンド下部を5Gアプリケーション用に開放するための周波数割り当て計画が議論されています。スペクトラムのこの部分を利用することで、5Gは従来のモバイル周波数バンド下部よりも多くの帯域幅を利用でき、このバンドは連続しています。一方でCバンドは現在、衛星地上局(SES)への衛星ダウンリンク用に使用されています。

周波数の割り当ては、国レベルで決定されます。そこで、ドイツと米国の現状を例として紹介します (GSA、2019)。
周波数の割り当ては、国レベルで決定されます。そこで、ドイツと米国の現状を例として紹介します (GSA、2019)。

背景

Cバンドでは大陸ゾーンのカバレージが得られ、このバンドは固定衛星サービス(FSS)に割り当てられています。ダウンリンクの周波数割り当ては、米国では3.7 GHz~4.2 GHz、欧州では3.4 GHz~4.2 GHzです。Cバンドは、地上インフラが低密度であるか存在しない田園地帯や海上での通信/放送サービスに最適です。Cバンドのもう1つの利点は、雨による減衰が小さいことで、熱帯地域でも安定したリンクを実現できます。さらに、Cバンドのサービスは、緊急時や災害復旧時に重要な役割を果たします。ただし、他のサービスと周波数スペクトラムを共有した場合(図1を参照)、既存のサービスへの干渉が生じます(図2を参照)。ダウンリンクに干渉があると、低雑音ブロック(LNB)が飽和する可能性があります。固定および移動地上局の既存の受信システムには、フィルターは適用できません。受信信号は、静止軌道から地球までの36,000 kmの距離を伝搬することで減衰されているため、非常に弱く、検出できなくなる可能性があります。規制機関は、携帯電話ネットワークの計画のガイドラインとなる制限を定めていますが、予想よりも広い範囲に電波が放射されないという保証はありません。

起きうる干渉のシナリオ
起きうる干渉のシナリオ

課題

5Gと衛星サービスがCバンドで問題を起こさずに共存できるようにするには、コンポーネントとシステムのレベルでの干渉シナリオをテストして、性能の限界を知る必要があります。規制機関側では、隣接局の等価等方放射電力(EIRP)を定義し、バンド外エミッションを特定する必要があります。5Gのようなアクティブアンテナ・システムでは、従来の基地局のEIRPに代わって、送信放射電力(TRP)の値が用いられます。

ローデ・シュワルツのソリューション

物理層の共存シナリオ

複雑な干渉シナリオをラボでシミュレートするには、R&S®SMW200A ベクトル信号発生器が最適なソリューションです。何種類かの5G波形があらかじめ定義されており、その他の5G New Radio波形をデザインすることもできます。衛星信号として一般的に使用されるDVB-S2も、R&S®SMW200Aで発生できます。オンボード5G/衛星信号の発生に加えて、R&S®WinIQSIM2™ シミュレーションソフトウェアを使えば、PC上で信号をデザインすることもできます。デザインした信号は、PCからR&S®SMW200Aに転送できます。R&S®SMW200Aには2つのRF経路が備わっているため、5G信号と衛星信号を同時に発生するために最適です。このセットアップを使用することで、DUTに信号を印加し、DVB-S2受信に対する5G信号の影響をシミュレートできます。また、R&S®SMW200Aは、任意波形発生機能を備えているため、他の形式の衛星信号の発生にも最適です。さまざまなタイプのノイズやフェージングを簡単に付加できます。

DVB-S2信号に対する5G信号の影響を、さまざまな方法で解析できます。
DVB-S2信号に対する5G信号の影響を、さまざまな方法で解析できます。

ライブDVB-S2信号に対する影響のシミュレーション

放送信号をリアルタイムで発生する必要がある場合は、R&S®BTC ブロードキャスト・テスト・センタが使用できます。外部信号源からMPEG-2トランスポートストリームを供給するか、内蔵のトランスポート・ストリーム・ジェネレーターを使用することで、ライブコンテンツを再生し、DVB-S2規格に従って変調できます。ビデオまたはデータコンテンツを含むこのDVB-S2信号は、モデムによってデコードされます。さらに、必要なDVB-S2信号に干渉信号を追加することもできます。必要信号と不要信号は、内部的にI/Qレベルで結合することも、外部的にRFで結合することもできます。R&S®SMW200AとR&S®BTCの両方の信号発生器を使用すれば、R&S®SMW200Aの高度な5G信号発生機能と、R&S®BTCによるライブコンテンツを含むDVB-S2放送信号の発生機能を組み合わせて使用できます。

スペクトラムとバンド外エミッションの解析

5G信号と衛星信号を復調し、どちらかあるいは両方の信号への影響を包括的に解析するには、R&S®FSW ハイエンド・スペクトラム・アナライザが最適です。この測定器には、RF信号の測定に使用できるスペクトラムマスクが備わっており、定義されたスペクトラムおよびバンド外エミッションを信号が満たしているかどうかを確認できます。図3は、R&S®FSWによるDVB-S2信号と5G信号の測定を示します。

今後の見通し

5Gでは、6 GHzより上のさまざまな周波数が検討されています。5Gの共存シナリオは、Ka、Q、Vの各衛星バンドでもいずれ発生する見込みです。ローデ・シュワルツの測定器は、該当する周波数バンドと伝送テクノロジーをすでにサポートしています。

まとめ

利用可能なさまざまな測定器とテクノロジーのおかげで、5G信号と衛星信号の共存を容易にシミュレートしてテストできます。これにより、周波数規制機関、衛星ネットワーク・サービス・プロバイダー、通信エンジニアは、大幅に時間を節約し、レシーバーシステム、基地局、コンポーネントの適切なテストに集中できます。ローデ・シュワルツは、複雑な共存シナリオのシミュレーションを、従来の方法と比較して高速かつシンプルにしました。

利点

  • 複雑な干渉シナリオの迅速で容易なセットアップ
  • R&S®SMW200AによるCバンド全体への対応
  • R&S®SMW200Aの優れた柔軟性によるユーザー定義可能な干渉シナリオ
  • DVB-S2/S2Xによるリアルタイムのビデオ/データコンテンツ送信が可能な独自のR&S®BTCソリューション
  • 将来の共存および干渉テスト要件にも対応可能

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