測定
シミュレーションで使用したコンポーネントを用いて、評価用ボードで伝導性EMIを測定しました。測定したスペクトラムとシミュレートしたスペクトラムを直接比較できるように、コモンモード/差動モードの分離を行いました。スクリーンショット「伝導性EMIの測定結果」の上のウィンドウは関連する差動モードノイズ、下のウィンドウはコモンモードノイズを示します。コモンモードのスペクトラムはこの設計では大きな役割を果たしていないものの、アイソレートされた電源の設計といった他の設計では、最適化されたEMIフィルターを作成するうえで貴重な情報となる可能性があります。
シミュレーション結果と測定結果とのずれ
シミュレーション結果と測定結果とのずれ(上の表を参照)については、複雑さを軽減するために、このスイッチングコンバーターの基本波周波数でのみ確認しました。スイッチングコンバーターの基本波周波数として、2 MHzを選択しました。さらに、EMIフィルターがある場合とない場合でシミュレーションを行いました。
LTpowerCAD® II設計ツールの場合、上の表から、測定結果とのずれは、EMIフィルターの有無に関係なく約10 dBであることがわかります。この差は主に、シミュレーション対象のPCBに寄生成分と高周波デカップリングキャパシタが含まれていないことが原因です。シミュレーション回路内のいずれかのキャパシタに直列インダクタンスや直列抵抗などの寄生成分がある場合、特に高い周波数ではEMIに大きな影響を与えることが示されています。
LTspice®ツールの場合、シミュレートした回路が実際の評価用ボードにより近いため、より良い結果が得られました。とはいえ、ここで説明したシミュレーションの場合、関連するPCBコンポーネントがまだ含まれておらず、不明だったため、多少のずれは予測されていました。インダクターやキャパシタなどのリアクティブな素子が正しくダンプされない場合、LTspice®ツール・シミュレーション・エンジンは発振する傾向があります。これは必要な微調整作業であり、安定したシミュレーション結果を得るには、ユーザー側にいくらかの経験が必要になります。その一方で、LTspice®などのシミュレーションツールは、寄生成分を含む電気回路を定義できるため、より高度なシミュレーションを実行できます。最も重要な寄生成分を指定するために労力が増えることと、シミュレーション時間が長くなることをデザイナーが許容できれば、このツールの方がメリットが大きいと言えます。