Qualcommのビーム特性評価とビーム検証

Qualcomm 5Gミリ波モデムSDX50およびSDX55のビームフォーミング性能を高めるため、アンテナアレイ内の個々の素子の特性を測定し、最適化します。

課題

ミリ波レンジで5Gを使用すると、データレートが大幅に高速化します。ただし、高周波で伝搬する信号は、経路損失が大きくなる傾向があります。したがって、信号利得を高めて経路損失を補うために、ビームフォーミングテクノロジーが重要となります。

ビームフォーミングでは、個々のアンテナエレメントの位相と振幅の相互相関によって、理想的なビームが形成されます。そのため、全体的なビームフォーミング性能の向上には、各アンテナエレメントの特性評価と検証が非常に重要です。

ビームフォーミング性能に影響を与える要因が多いため、このプロセスは通常、新しいUEの開発中に実行されます。要因には、UEハウジング、モデム、アンテナのほか、ハードウェアレイアウトといったものも含まれます。このため、量産前に「ゴールデンデバイス」の特性評価と検証を行い、製造中にデバイスサンプルを検証します。ビームの特性評価は、基本的に、「FR2で実行されるレガシーテクノロジーのUE校正」と見なすことができます。

ビームの特性評価と検証のプロセス全体は、R&S®ATS1800C アンテナ・テストチャンバー、R&S®CMP200 無線機テスタなど、Qualcommが承認した測定器を使用して、自動化ツールのQualcomm Development Acceleration Resource Toolkit(QDART)によって自動化されます。

ローデ・シュワルツのソリューション

手順

下の図に、ビーム特性評価とビーム検証のハードウェアセットアップ全体を示します。DUTはR&S®ATS1800C チャンバー内の3Dポジショナーに取り付けられ、測定はR&S®CMP200 無線機テスタを使用して無線で行われます。その間のテスト手順は、コントローラーPCのQDARTによって自動化されます。さらに、DUTの設定と測定データの収集も、QDARTが自動で行います。

ビーム特性評価とビーム検証では、DUTの必要なすべての向きでビーム特性を決定するため、DUTは、R&S®ATS1800C 3Dポジショナーが両軸で回転中に信号を送信するように設定されます。信号がR&S®CMP200 無線機テスタによって測定され、結果がコントローラーPCに保存されて、さらに処理が行われます。

ビーム特性評価の目的は、ビーム特性を識別して、校正マトリクスを作成し、DUTにプログラムできるようにすることです。その後に、ビーム検証プロセスでビーム特性を再度調査します。今回は、DUTのビームフォーミング性能を検証するため、測定された信号をベンチマーク値と比較します。この校正マトリクスを、その後の製造段階で製造中のDUTのバルクにそのまま適用し、ビーム検証プロセスを使用してサンプルをチェックできます。

Qualcommのビーム特性評価
上の図は、ビーム特性評価とビーム検証のハードウェアセットアップ全体の構成を示したものです。
CMP200 無線機テスタおよびCMPHEAD30
R&S®CMP200 無線機テスタおよびR&S®CMPHEAD30
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R&S®CMP200 無線機テスタ

R&S®CMP200は、ベクトル・ネットワーク・アナライザとARBベースの発生器機能を統合したIFテスタです。革新的な分割コンセプトにより、R&S®CMP200とR&S®CMPHEAD30を使ったミリ波レンジでの高確度の測定が可能になりました。

R&S®ATS1800C CATRベース小型5G NRミリ波テストチャンバー
R&S®ATS1800C CATRベース小型5G NRミリ波テストチャンバー
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R&S®ATS1800C CATRベース小型5G NRミリ波テストチャンバー

R&S®ATS1800Cの特長は独自の垂直CATRデザインにあり、フットプリントに占めるクワイエットゾーンの割合が高いだけでなく、水平チャンバーに比べて重いDUTを取り付けることができます。このため、スマートフォン、タブレット、さらにはノートパソコンまで、高速で頑丈な3Dポジショナーに取り付けてテストできます。

主な特長と利点

  • R&S®ATS1800CとR&S®CMP200/RRHの組み合わせの場合、QDARTの「F」(機能)ステータス
  • R&S®ATS1800Cは小さいフットプリントでスペースを節約
  • すべてのサイズのデバイスに対応する大きなクワイエットゾーン
  • 高速、高確度の3Dポジショナー
  • 短いミリ波配線によって最適化されたリンクバジェット
  • 最高の精度と歩留まりを実現する経路補正の完全自動化コンセプト
  • 信頼性と精度を確保できるワンストップショップ

まとめ

ビームの特性評価と検証は、5Gミリ波デバイスにとって重要です。これは、レガシーテクノロジーのUE校正に相当します。R&S®ATS1800C CATRベース小型5G NRミリ波テストチャンバーとR&S®CMP200 無線機テスタをR&S®CMPHEAD30と組み合わせることにより、Qualcommによって検証済みの推奨フルソリューションを保有できるだけでなく、理想的なコンパクト環境での正確で迅速かつ効率的なビーム特性評価が可能になります。ローデ・シュワルツは国際的な企業として、ビーム特性評価のセットアップと実行の準備を整え、最高の性能と品質レベルで動作を維持できるよう、世界的なサービスとサポートをお客様に提供しています。

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