ゾーントリガによるDDRのREAD/WRITE分離

システム設計でのDDR DRAMメモリインタフェースのデバッグや検証には困難が伴います。R&S®RTP ハイパフォーマンス・オシロスコープのゾーントリガは、シグナルインテグリティーの解析に不可欠なREAD/WRITE分離を行うのに最適です。

シグナルインテグリティーのデバッグや検証を行うため、高速モジュラープローブをDDRメモリインタフェースに接続したR&S®RTP ハイパフォーマンス・オシロスコープ
シグナルインテグリティーのデバッグや検証を行うため、高速モジュラープローブをDDRメモリインタフェースに接続したR&S®RTP ハイパフォーマンス・オシロスコープ

課題

データレートの上昇と設計の高密度化により、DDRメモリインタフェースの統合はこれまで以上に難しくなっています。開発者は、コントローラーとDDR DRAMメモリとの間で信頼性の高いデータ交換を行えるように、適切なシグナルインテグリティーを維持しなければなりません。

シグナルインテグリティーの検証やエラー原因の特定を行う際には、オシロスコープが重要です。データ(DQ)信号とデータストローブ(DQS)信号は双方向に動作するため、これは非常に困難な課題です。DQ信号とDQS信号でREAD(メモリからプロセッサにデータを送信)とWRITE(プロセッサからメモリにデータを送信)のバーストを区別することは容易ではありません。シグナルインテグリティー解析では、READ/WRITE信号を分離して処理する必要があります。

READバーストとWRITEバーストを含むDDR4のDQ(C2:緑色)信号とDQS(C3:オレンジ色)信号。この例では、振幅に基づいてREAD/WRITEバーストを視覚的に区別することができる。(R:READ、W:WRITE)
READバーストとWRITEバーストを含むDDR4のDQ(C2:緑色)信号とDQS(C3:オレンジ色)信号。この例では、振幅に基づいてREAD/WRITEバーストを視覚的に区別することができる。(R:READ、W:WRITE)
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ローデ・シュワルツのソリューション

構成例

この例では、DDR4 DRAM DIMMを搭載したPCシステムを使用し、MemTest86メモリテストソフトウェアを使ってデータ転送をシミュレートし、RANDOMテストモードでREAD/WRITEバーストを適度に組み合わせて送出しています。テストでは、通常、クロック信号、選択したDQ信号と関連するDQS信号、およびCSなどのコマンド/アドレス信号に高速プローブをはんだ付けします。

DQS信号上の交差しないゾーン1により、動作が行われていない状態でREADおよびWRITEバーストの開始に信号収集のフォーカスを合わせる。
DQS信号上の交差しないゾーン1により、動作が行われていない状態でREADおよびWRITEバーストの開始に信号収集のフォーカスを合わせる。
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ゾーントリガ

ローデ・シュワルツのオシロスコープのゾーントリガ機能では、波形ダイアグラム上の領域を定義し、信号収集をトリガする際にこれらを交差する/交差しないことを指定できます。このようなゾーンを使用することで、信号収集のフォーカスを特定の信号特性に合わせることができます。

このプロセスをDQS信号に適用すると、さまざまなプリアンブルモードやREAD/WRITEバーストの信号振幅にフォーカスを合わせてDDRインタフェースをテストできます。

ゾーントリガは、EDGEやパルス幅などの標準のトリガイベントと組み合わせて動作します。下の例では、EDGEをDQS信号に適用し、最初のゾーン(交差しない)で信号バーストの開始にフォーカスを合わせます。DQ信号をオーバーレイ(残光表示オン)することで、READとWRITEの両方が収集されていることがわかります。DQ信号のエッジは、READバーストの場合はDQS信号に対してエッジアラインになり、WRITEバーストの場合はセンターアラインになります。

交差しないゾーン2により、振幅が制限されて信号収集からREAD信号が除外される。ゾーン3によりバースト長が8ビットに制限される。
交差しないゾーン2により、振幅が制限されて信号収集からREAD信号が除外される。ゾーン3によりバースト長が8ビットに制限される。
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追加のゾーンでは、READバーストとWRITEバーストを区別できるように、特定用途の信号特性にフォーカスを合わせることができます。プローブはメモリデバイスの近くに接続されるため、多くの場合、プロセッサからメモリまでの信号チャネルでの伝送損失によってWRITEバーストの信号振幅が小さくなります。

WRITEの連続収集に対してマスクテストを適用。DQ信号でカラーテーブルを適用することでDQデータ信号の統計的分布を可視化。
WRITEの連続収集に対してマスクテストを適用。DQ信号でカラーテーブルを適用することでDQデータ信号の統計的分布を可視化。
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確実に分離を行った後に、他の解析ツールを利用することができます。例えば、DQ信号とDQS信号の両方での単純な振幅/タイミング測定を行ったり、DQ信号とDQS信号との間でタイミング測定を行ったりすることができます。さらに高度なシグナルインテグリティーテストとして、ジッタとノイズを特定するヒストグラム測定や、データアイの開きを確認するマスクテストを行うこともできます。ゾーントリガによるREAD/WRITE分離を使用すると、テストを連続的に実行してシステムの信号異常を検出することができます。

まとめ

ローデ・シュワルツのオシロスコープのゾーントリガは、メモリインタフェースのデバッグや検証に役立つ強力なツールです。標準の強力なトリガイベントと対象となる信号遷移を特定するゾーンを組み合わせて使用することで、シグナルインテグリティー解析を行う上で不可欠なREAD/WRITEの分離を確実に行うことができます。ローデ・シュワルツのオシロスコープはデータ収集レートが速いため、データをすばやく収集し、高い統計的信頼度を実現できます。