エクステンデッドリアリティ（XR）のテスト

XRテクノロジーは、巨大な仮想世界を体験するインタフェースを提供するため、メタバースの根幹をなします。高品質なメタバース体験の提供には、XRベースのテクノロジーとサービスのパフォーマンスが不可欠です。
XRのアプリケーションとデバイスについて学習し、設計検証に役立てるには、互換性のあるテストベッドセットアップが必要です。それは、今日の5GおよびWi-Fiネットワーク、ならびに将来の6GネットワークでXRベースアプリケーションのパフォーマンスを徹底的にテストする必要があるためです。こうしたテストベッドは、複雑なクラウドコンピューティングアーキテクチャー内を移動し、最終的にエンドユーザーデバイス（ARグラスやVRヘッドセットにつながった5Gスマートフォンなど）に到達する、サーバーからクライアントまでのデータの流れ全般を網羅することになります。このテストベッドでは、さまざまなデバイスを単独で、あるいは組み合わせてアプリケーションのテストができ、実際のシナリオでの相互運用性と最適な性能を確保することができます。このような包括的なテスト環境によって、設計およびテストエンジニアだけでなく、コンテンツ開発者も、考えられるボトルネックやパフォーマンスの問題を特定、対応できるため、XRアプリケーションはさまざまなプラットフォームとネットワーク条件で高品質な没入型体験をユーザーに提供することができます。

ARおよびVRアプリケーションで5Gテクノロジーを推進

5Gの展開はいまだ初期段階であり、今のところ当初の約束を達成していません。多くの消費者はまだこのテクノロジーの利点を体験できていません。ユーザー1人当たりの平均売上（ARPU）は、4G LTEと比較して大きな伸びを見せていないため、5Gテクノロジーへのさらなる投資（例：追加容量が必要となるミリ波周波数の拡大）は難しくなっています。そのため、このテクノロジーは岐路に立たされています。専門家によれば、5Gには “キラーアプリ” による後押しが必要です。XRとメタバースは “キラーアプリ”、つまり、5Gテクノロジーの潜在能力をフル活用できる重要な推進力と考えられます。

3rd Generation Partnership Project（3GPP）は、リリース17でエクステンデッドリアリティ（XR）について徹底的に調査しました。XRベースアプリケーションのシームレスな運用のために5Gネットワークと5Gデバイスを微調整するうえで、現行の5G規格における限界と改善の可能性を特定するためにこの調査は不可欠でした。これが足掛かりとなり、5Gの次のフェーズ、5G-Advancedがリリース18に盛り込まれました。このリリースでは、XR用に5Gを最適化するという明確な目的のもと、具体的な仕様と機能強化が定義されました。このプロセスの核心は、XR体験を実現する実用的な5Gアプリケーションのさまざまなユースケースを包括的に分析することでした。その中で、5GによるARアニメーションアバター通話のシナリオが例として傑出していました。このユースケースは、5GとXRの革新的な統合を示すだけでなく、5GネットワークでXRの機能をテストするときの技術的なハードルを調査する入口としても価値があります。

メタバースとXRの設計とテストにおける課題

XRテクノロジーは、巨大な仮想世界を体験する没入型のインタフェースを提供するため、メタバースの根幹と見なすことができます。モバイルデバイスとネットワークインフラストラクチャコンポーネントのチップセットは、ARグラスやVRヘッドセットなどのXR対応のアプリケーション／デバイスの機能的なエコシステムを提供するため、あらゆる形でメタバースにアクセスして関与するために不可欠な存在です。

高データレートと低遅延は、XRサービスの決定的要素です。乗り物酔いなどの問題を回避し、スムーズな没入型体験を作り出すためには欠かせないためです。

具体的な詳細はデバイスの形状、ターゲットとなるユースケース、コンピューティング能力に基づくものの、コンシューマーアプリケーション用のXRデバイスには、一般に小型軽量とファッション性だけでなく、低消費電力も求められます。こうした要件から、性能と機能に妥協することなくサイズと消費電力を削減することが課題となっています。

そのため、XRデバイスではエネルギーの有効利用が特に重要であり、これによりデバイス（特にポータブル／ウェアラブルデバイス）の長寿命化と持続可能性が確保されます。この特徴はメタバース体験には不可欠です。

さまざまなベンダーから提供される各種コンポーネントがシームレスに相互作用するには、これらが必要なレベルで動作することを確認するために、徹底的なテストが必要です。

XRデバイスのテストでは、機能性、ユーザビリティー、性能、ユーザーにとっての快適さといった重要な要因を評価します。XRのアプリケーションとデバイスには独自の高度な機能があるため、従来のテストツールとプロトコルでは不十分な可能性があります。その分、XRテストは複雑化し、XRデバイスを効率的に評価するには専門のアプローチが必要になります。

メタバースとXRのテストソリューション

電子計測ソリューションのリーダーであるローデ・シュワルツは、モバイルデバイスおよびチップセットでのXRベースアプリケーションのシームレスな動作をテストできる最先端のテストベッドセットアップを提供しています。チップセットだけでなく、AR/VRデバイスおよびアプリケーションのQoEと性能もテストできます。

このセットアップの中心的存在が、R&S®CMX500 5Gワンボックス・シグナリング・テスタとR&S®ATS1800C チャンバーです。XRアプリケーションをエンドツーエンドの視点でテストするために、5G NRまたはWi-Fiネットワークをエミュレートします。

ローデ・シュワルツは、Wi-Fi経由で5GデバイスにつながっているARグラスやVRヘッドセットをテストできる制御された環境を提供しています。その環境では、さまざまなトラフィック環境とトラフィックパターンをエミュレートして多様なネットワーク条件を用意し、それらの条件でスループットや遅延などのパラメータを測定できます。このセットアップでは、一般にネットワーク障害のピーク（例：IPジッタ）が発生するようなモビリティーシナリオ（例：ハンドオーバー）を幅広くテストできます。5GとWi-Fiが同時にサポートされているため、包括的な相互運用性テストと性能テストを実行して、セルラーネットワークと非セルラーネットワーク間でのオフロード機能を確認することができます。ネットワーク間の移行がアプリケーションの性能に影響しないことを確認するのは必須の作業です。ローデ・シュワルツのソリューションでは、各種パラメータをテストし、ユーザーへの3Dコンテンツのストリーミングをエミュレートできます。

ローデ・シュワルツのセットアップでは、ネットワークの輻輳や困難な無線周波数（RF）条件を再現し、こうしたパラメータでアプリケーションの性能をテストできるという利点もあります。そのため、理想的とは言い難い状況でも、堅牢で信頼性の高いユーザーエクスペリエンスを提供できるかどうかを検証することができます。