R&S®サーバーベース・テストによる5G New Radioマルチキャリアテストの時間短縮

R&S®サーバーベース・テストは、並列化できる作業負荷のテスト時間を短縮する役に立ちます。5G New Radio(5G NR)マルチキャリア信号は、各コンポーネントキャリアを独立かつ並列に解析できる理想的な作業負荷です。EVM測定の例では、わずか1台の機器からI/Qデータを受信する場合でもシナリオテストの時間を大幅に短縮できます。

5G NRマルチキャリアDUT
5G NRマルチキャリアDUT
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課題

5G NRマルチキャリアDUTの性能はベンチマークする必要があり、その測定基準はエラーベクトル振幅(EVM)です。

5G NR信号のテスト時間は、複雑化と広帯域化により、無線通信テクノロジーの旧世代における同等の測定と比較して増加しています。長いテスト時間を軽減するための選択肢の1つは、5Gフレームの一部のみを評価することです。しかし、3GPP規格に準拠した測定が必要な場合、この方法をとることはできず、すべてのフレームを解析する必要があります。

ここで、周波数レンジ2(FR2)において各コンポーネントキャリアが100 MHzの帯域幅を有するフルフレームの5G NRマルチキャリア信号の測定を考えてみます。

ローデ・シュワルツのミッドレンジまたはハイエンドのスペクトラム・アナライザでR&S®FSx-K144 5G NRオプションを使用すると、左の図に示すようにパワーに対するEVM性能を評価するための測定シナリオをセットアップすることができます。しかし、キャリアの測定はシーケンシャルに行われ、テスト時間は測定対象のキャリアの数に比例して増加します。

59件の測定の総テスト時間
59件の測定の総テスト時間
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ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®サーバーベース・テストは、信号解析のアウトソーシングと並列処理手段の両面で、5G NRマルチキャリアテスト時間の短縮に役立ちます。ユーザーは、並列化の度合いを決定し、作業を行う信号解析マイクロサービス(SAMS)を構成できます。

注:マイクロサービスは測定器のオプション(例:5G NR解析用のR&S®FSV3-K144)と同じアルゴリズムを使用します。したがって、R&S®サーバーベース・テストによる測定結果は測定器の測定結果と一致します。

R&S®サーバーベース・テストは、パワフルなサーバーハードウェアにインストールして複数のソースからI/Qデータを受信する場合に真価を発揮します。このアプリケーションカードでは、I/Qデータソースとして使用される機器が1台のみの場合でもテスト時間が大幅に改善されることが明らかになっています。これをお見せするために、出力掃引マルチキャリアEVM性能測定を2回実行しました(右図参照)。

  • R&S®FSVA3000単独
  • R&S®サーバーベース・テストを使用して信号解析を行った場合

両方のケースで、自動振幅レベリングとI/Q捕捉を実行しました。信号解析時間はコンポーネントキャリアの数に比例して増加します。各キャリア解析は独立しており、R&S®サーバーベース・テスト上で他のキャリア解析と並列化することができます。上の図は、8つのコンポーネントキャリアの測定でR&S®サーバーベース・テストを用いた場合、測定器のみのシナリオと比較してテスト時間が89 %短縮されたことを示しています。

信号解析マイクロサービス(SAMS)の最適数を探る

SAMSの最適数は、マルチサーバー・キューイング・モデルで推定できます。ここでは2つのパラメータが重要です。I/Qデータ受信の平均速度と、1つのSAMSが信号解析の実行に要する時間の平均値です。1)

1) SAMSの最適数を推定する方法に関して詳しくは、Rohde & Schwarz スペクトラム・アナライザの製品管理にお問い合わせください。

SAMSの数

必要なハードウェアは?

必要なSAMSの数が判明すれば、それに応じてハードウェアを選択できます。マルチキャリア測定に必要な時間の短縮目標を達成するには、4つのSAMSで十分です。ローデ・シュワルツでは、SAMSごとにプロセッサコアを2個用意することを推奨しています。

例として、測定シナリオを2つの異なるハードウェア構成上で実行しました。プロセッサコアが8個の小型PCと、プロセッサコアが40個のパワフルなサーバーです。

小型PCのCPUのベース周波数の方が高く、最大4つのSAMSを構成する際にわずかに有利です。このマシンのハードウェアリソースは、8つのSAMSの並列動作をサポートするには不十分です。測定シナリオを、I/Qデータソースとして構成された2台の機器と8つのSAMSでR&S®サーバーベース・テストを用いて実行した場合、小型PCでのテスト時間はサーバーと比較して約52 %増加します。

R&S®サーバーベース・テストによるテスト環境の例
R&S®サーバーベース・テストによるテスト環境の例
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まとめ

R&S®サーバーベース・テストは、複数のソースからI/Qデータを受信する場合に真価を発揮します。5G NRマルチキャリア測定は高度に並列化でき、わずか1台の機器から捕捉した場合でも、データに関する測定を高速化するための理想的な作業負荷が得られます。このシナリオのハードウェア要件は高くないため、小型PCでも8つのコンポーネントキャリアがある測定でテスト時間を最大89 %短縮できます。複数のI/Qソースが構成されているような、より過酷な測定シナリオでは、それに適したサーバーハードウェアがR&S®サーバーベース・テストに必要になります。

主な特長と利点

  • 5G NRマルチキャリアDUTの正確な特性評価の高速化を支援
  • 現在は3GPPに適合した5G DL/ULならびに4G DLのEVM計算をサポート
  • 追加サポート:SEMやACLRなどの業界標準のスペクトラム測定
  • R&S®サーバーベース・テストでの並列化の度合いは特定の要件および/またはエンジニア/ユーザーによって決まる
  • I/Qデータの捕捉とエクスポートが可能なすべてのローデ・シュワルツ製測定器と互換(I/Qデータは互換可能な形式の必要がある)
  • 高度にローカル化された動作(インターネット接続不要)

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