トリガ出力によりATEの時間を短縮する

自動テスト機器(ATE)は製造施設の基礎です。ユーザーに対して安全で信頼性の高い動作を保証するために、さまざまな制限に従って被試験デバイス(DUT)を測定する必要があります。製造施設では、このようなテストが適切に実行され、すべての必要なテストケースがカバーされていることを確認しなければなりません。同時に、テストは十分な速度で実行されている必要もあります。オシロスコープ(ローデ・シュワルツのMXOシリーズなど)は多くの場合、ATEの代表的な一部を構成しており、専用の「トリガ待ち」信号を用いることでワークフローを改善することができます。

課題

製造ラインの設計と運用は場合によっては困難です。メーカーの異なる測定器の制御と保守が必要です。多くの場合、テスト時間の短縮は2次的なステップですが、それでも必要なステップです。

テスト機器のレディ(準備完了)状態を決定するには、多くの場合、ステータスメッセージをポーリングするか、単に測定器を待つといった処理が必要になります。この点において、オシロスコープの動作も変わりません。オシロスコープは、収集、波形の捕捉、測定の実行などにトリガを使用します。オシロスコープが収集できる状態になっているかどうかを把握することが場合によっては重要で、これによりテスト時間を短縮することができます。

ローデ・シュワルツのソリューション

オシロスコープのレディ状態を決定する場合は、次の3つの方法で対処できます。オシロスコープは、専用の「トリガ待ち」信号を用いることで、ワークフローを改善できます(次のページを参照)。

1. 待ち時間の設定
最も簡単で緻密でない方法は、スクリプトに待機コマンドを追加する方法です。こちらは非同期性の高いワークフローで、(自動テスト機器に関しては、テスト機器と制御ソフトウェアの同期が暗黙の了解です。)オシロスコープのトリガをアーミングし、一定時間だけ待ち、別のテスト機器を開始し、(うまくいけば)オシロスコープが収集と測定を実行する間もう一度待ち、その後、データを問い合わせます(図1の左を参照)。当然ながら、待ち時間が短すぎると不正確な結果になる場合があり、テストをやり直す必要が生じたり、タイムアウトなどのために制御ソフトウェアに不確実な調整が必要になったりします。この手法は実装しやすく、開発中の簡単な修正に使用される場合があります。

自動テスト機器の実装手法
図1:自動テスト機器の実装手法 左:待ち時間の設定、中央:ソフトウェアポーリング、右:トリガ出力による同期
ライトボックスを開く

2. ポーリング
この手法は実装がやや複雑ですが、一般的に安定した動作を確保できます。メーカーによっては、ステータスバイト(STB)にオシロスコープの重要なステータス条件が含まれています。STBの動作は複雑な場合があるので、STBを扱う際には通常、測定器マニュアルをある程度調べる必要があります(図1の中央を参照)。
重要な側面は、以下のとおりです。

  • 測定器をアーミングする(RUNSingle, *OPC?)
  • 「トリガ待ち」のSTBをポーリングする
  • 別のATEを開始する
  • 収集が完了したかどうかを監視する(例:STBのOPCビットをポーリングする)

ポーリングの調査と実装には、ある程度の労力が必要です。しかし、配線接続された信号がない場合、STBのポーリングは、唯一の適切な実装方法になる場合があります(マルチスレッド方式のアーキテクチャーでは、VISA WaitOnEventを介した同期も可能です)。「測定の同期」に関するトピックの詳細については、ローデ・シュワルツのホームページを参照してください。

MXOシリーズ オシロスコープのトリガ出力設定ダイアログ
図2:MXOシリーズ オシロスコープのトリガ出力設定ダイアログ
ライトボックスを開く

3. トリガ出力の同期
前述のワークフローでは、SCPIコマンド、"RUNSingle; *OPC?"を、開始時すぐに使用します。先頭のコマンドは測定器をアーミングし、2番目のコマンドは収集の完了時に"true"を返します。

このケースでは、"true"が返されるまでプログラムの実行が停止されます。そのため、別のテスト機器を同期するための「トリガ待ち」ポーリングシーケンスを使用できません。そのため、応答までの時間が長すぎると、VISAタイムアウトエラーが発生する場合があります。この期間中は、制御ソフトウェアから別のテスト機器を開始することもできません。このような制限を排除するには、専用の(物理的な)トリガ出力信号を使用します。

MXOシリーズ オシロスコープでは、これまでSTBでのみ使用可能だった「トリガ待ち」ステータスビットを、トリガ出力ポートにルーティングするように設定できます(図2を参照)。

オシロスコープのトリガ出力を介した別のATEの同期
図3:オシロスコープのトリガ出力を介した別のATEの同期
ライトボックスを開く

トリガ出力ポートは、別の測定器に動作を開始するための信号を送るために、各測定器に接続します(図3を参照)。

プログラミングワークフローを図1の右側に示します。一般的なコマンドである"RUNSingle; *OPC?"により、オシロスコープをアーミングすると、ハードウェアを介してレディ状態が通知されます。収集が完了すると、*OPC?が"true"を返し、その後のスクリプトが継続されます。

まとめ

オシロスコープのレディ状態に別のATEを同期させるために、さまざまな手法を使用することができます。ステータスバイトとイベントステータスレジスタ(ESR)に関連する障害を回避する1つの方法として、物理的な「トリガ待ち」信号を介して測定器を同期させる方法があります。これにより、セットアップ全体のプログラムが容易になり実行が高速になります。このような作業向けに、MXOシリーズ オシロスコープは非常に簡単に使用できます。