真犯人を探せ!ある若手エンジニアのノイズ対策奮闘記

なかなか特定できないノイズ源、真犯人はどこに?

コンプライアンス・テストに向けて、昼夜を問わずノイズ源を探っているエンジニアのS君。 会社の暗室を10回以上も借りて同じ製品を測定しているのですが、なかなか原因が特定できません。

ご存知の通り、EMIテスト・レシーバを使用したノイズ測定には時間がかかります。最近では、タイムドメイン・スキャン機能と呼ばれるFFTによる解析機能を搭載した製品も登場し、測定時間がかなり短縮されましたが、またまだ手軽に使える製品ではありません。加えて、コンプライアンス・テストなどを行おうとするとテストハウスや暗室などを使った大掛かりな測定が必要で、お金も手間もかかります。往々にして一度の測定では規格をクリアできずに、総当たり的にノイズの発生源とみられる箇所を修正するため、多くの経験とスキルが要求されます。

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測定器には様々な種類があり、その機能はますます進化しています。それぞれの良いところを使いこなしてもっと効率よくデバッグを進める方法はあるのでしょうか?ここでは簡単なノイズ対策のケースを通して、ツール連携による効率的なデバッグの一例を紹介します。

電子回路のシステムデバッグの流れは推理小説の犯人捜しのプロセスによく似ています。今回は話をできるだけわかりやすくするために、推理小説になぞらえて解説を進めます。

真犯人を探せ!ある若手エンジニアのノイズ対策奮闘記

1章:ノイズの発生のメカニズム
2章:ノイズ測定の実際 - IP電話用ケーブルの電流測定
3章:大きい近磁界プローブを用いた測定
4章:小さい近磁界プローブを用いた測定
5章:差動プローブを用いた測定

≪おわりに≫ プローブの正しい選び方

はじめに1つ質問です

ノイズ測定には必ず「EMIテスト・レシーバー」を使う、は正しいでしょうか?

ソリューション1

遠方界のテストではEMIテスト・レシーバが必須

EMIテスト・レシーバが必須となる測定は、遠方界でのコンプライアンス・テストです。しかしながら、実際の対策は遠方界の測定結果を元に、どの素子がノイズを発生させているのか、あるいは電源の位置を変えたほうが良いかなど、近傍界で測定および検証する手法が一般的に用いられています。こうした対策用途にEMIレシーバを使用すると、測定時間がかかるだけでなく、総当たり的にノイズ源を探る必要があるため、測定の手間も非常にかかります。

ソリューション2

近傍界には実はもっと便利なツールがある

“ノイズ測定”というと一般的に電界強度測定器の名称でも知られるEMIテスト・レシーバなどを思い浮かべる読者の方も多いのではないかと思います。そこでぜひ活用したいツールがオシロスコープです。かつては、信号品質を見るだけの測定器でしたが、時代とともに大きな進化を遂げ、ノイズ測定をも可能にしました。

特に近傍界での測定には、オシロスコープを導入することで、測定にかかる手間と時間が大幅に削減できるだけでなく、より確実にノイズ源を、誰でも見つけることが可能になります。具体的には最新のFFT機能を使うことでEMIテスト・レシーバに近い測定結果が短時間に得られるのです。さらにはEMIテスト・レシーバでは不可能な時間軸での測定を、FFTによる周波数軸での結果と同時に観察することで、より確実にノイズ源を探り当てることができます。つまり、EMIレシーバとオシロスコープは補完関係にあり、共に使用することで、迅速で正確なノイズ測定を実現します。次のコンプライアンス・テストで合格する確率が飛躍的に向上するというわけですね。

では早速本編に進みましょう。理解しやすくするために、第1章では「ノイズの発生のメカニズム」について簡単に整理します。

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